書評<環境活動家のウソ八百>
グリーンピースに代表されるNGOから国連の内部部局まで、世界は”環境保護”が絶対正義のようにうたわれている。しかしながら、その活動に勤しむ人たちは科学的データを意図的に無視し、世界に危機を煽る。本書はそうした環境保護活動家たちの現実を、その思想から彼らの提供する科学的データの意図的なねじ曲げを明かし、彼らの偽善を暴いていく。
原著の著者はイタリア人。なので環境保護活動家の偽善を明かすにしても、まずは優生学に基づくバース・コントロールから始めていくあたりが、カトリック的な宗教的背景が見えて面白い。アフリカの人口爆発を一部でカトリックのせいにされていることへの反論的な部分もあるのだろう。
それと、「環境活動家のウソ八百」と言い切るには、やや矛盾をはらんでいるところもある。例えばアマゾンの熱帯雨林伐採により、いかにも世界の森林面積が減少しているかのような印象を受けるが、実際には森林面積は増加している。このことを扱った章ではヨーロッパでは「植林や保護計画により」森林が増加した、とある。保護活動家が声を上げたから保護計画が生まれたことは否定できまい。このことから、むしろ環境保護活動家がウソ百百を並べているというより、もはやその役目はもはや終了しつつある、というべきであろう。革命家や政治運動家が本来の目的を見失っていくのは、サヨク的活動の常であるとつくづく感じる。
書評2008/08 洋泉社/洋泉社新書
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