書評<ゲート―自衛隊彼の地にて、斯く戦えり〈2〉炎龍編>
銀座に開いた異世界との<ゲート>から、異形の兵士や化け物たちが侵攻、自衛隊がそれに反撃して<ゲート>の異世界側、“特地”に橋頭堡を築いてはや一年近く。橋頭堡である<アルヌスの丘>近辺に近隣住民との独自の経済圏も形成され、帝国との外交交渉もスタートするなど、事態は刻々と変化しつつある。
住民たちと良好な関係を築きつつある自衛隊の特地派遣部隊だったが、あるエルフの旅人が<炎龍>の退治を依頼しに訪れる。旅人は策を弄し、主人公の伊丹たちは<炎龍>退治に出動せざるをえなくなる。
ファンタジー世界にて自衛隊かく戦えり、のシリーズ第2弾。本書では戦闘描写はやや抑え目に、外交交渉や経済圏の形成、あるいは皇帝家の身内の諍いに物語の重点が置かれている。“分かってる人”向けのパロディやギャグもやや抑え目にしてあり、しごく真面目に権力争いが描かれている。
また、次作以降への伏線として重要なのは、同胞を守る意識の高い現代国家である日本と、庶民の犠牲を厭わないヨーロッパ中世の国家との対峙の結末であろう。圧倒的な戦力ゆえに勝利を重ねてきた自衛隊に、果たして落とし穴があるのか?思ったより深い物語になりそうである。
初版2010/08 アルファポリス/ソフトカバー
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