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2010.08.16

書評<シー・シェパードの正体>

毎年のように日本の捕鯨船団相手に妨害活動を繰り広げる自称“環境保護団体”、シーシェパード。彼らの過激な活動は誰に支えられているのか?カリスマであるリーダー、ポール・ワトソンの生い立ちとはどんなものだったのか?本書は南極海にて拘束され、日本の法律で裁かれたシーシェパードのメンバーの動向を縦軸に、ポール・ワトソンの半生を横軸にして、シーシェパードなる団体の実体を明かしていく。

本書を読んで意外だったのは、シーシェパードが人種差別主義者あるいは民族差別主義者の集団ではないということである。「美味しんぼ」の刷り込みが強く、反捕鯨は日本人蔑視と結びつけがちだが、シーシェパードの攻撃の第一歩はヨーロッパであり、捕鯨以外でもカナダでアシカの保護活動にも力を入れているようだ。彼らはただただ、狂信者なのである。もちろん、“平和国家”日本が与しやすい一面はあるのだろうが。
問題はシーシェパードのスポンサーたちであろう。ハリウッドやウォール街の成功者たちが、対外的なイメージを維持するために、象徴的な団体への寄付を続ける。そうなると、地味なNPOより派手なシーシェパードにお金が集まるのも当然だ。日本がシーシェパードに本気で対峙するならば、現場での毅然たる活動だけではなく、広報活動がより重要となるだろう。

初版2010/06 扶桑社/新書

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