書評<辺境生物探訪記 生命の本質を求めて>
南極や北極といった気候的な極地、深海や火山といった生物など存在しないであろう場所にも、細菌や古細菌といった微生物が存在している。高温、乾燥、低酸素、放射線などなど、生命に害を及ぼすであろう環境に適応している細菌を研究する科学者、長沼毅博士と、SF作家である藤崎慎吾氏が対談形式で、それらの極限に生きる生物を解説し、パンスペルニア説(生命の起源は宇宙からの飛来物に由来するとする説)を検証する。
内容を紹介するとなんだか固い印象になってしまうが、実際には長沼博士の気さくな人柄とそのライトな語り口により、驚くべき事実もサラサラと読めてしまう良書。博士は極限環境へ実際に出向いて探索を続ける”冒険者”であり、その解説には説得力がある。極限生物について多少の知識はあったが、放射線に対する耐性を持ち合わせている細菌までいるとは驚きであった。厳しい宇宙空間を経由するパンスペルニア説は噴飯モノだと思っていたが、ありえる話だと思えてきた。つくづくも、生物学はおもしろい。
初版2010/07 光文社/光文社新書
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