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書評<ゴールデンタイム〈1〉春にしてブラックアウト >

晴れて東京の大学に入学し、一人暮らしも始めて浮き足立つ一般ピープル、多田万里。だが、彼は見た目パーフェクト、完璧なお嬢様の加賀香子に出会ってしまった。プライドが高く、思い込みが激しい彼女だが、それはどこか危うく、自分のことに興味がないと知りながら、万里は香子に魅かれていく。

「とらドラ!」で一躍、人気作家となった著者期待の最新作。意外なことに舞台は大学であり、ラノベも成熟期に入って、読者年齢層が上がっていることを想定しているのか、あるいはアスキーの他ブランド移籍への布石かとか、いろいろ勘ぐってしまうが、軽快なテンポで進むラブコメであることには変わりない。
物語自体はほぼ導入部と言ってよく、登場人物の掘り下げも主人公とヒロイン以外はまったく進まず、連載が進まないことにはシナリオ自体は評価しにくい。今後の展開に期待である。

初版2010/09 アスキーメディアワークス/電撃文庫

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書評<フォードvsフェラーリ 伝説のル・マン>

ル・マン24時間耐久レースは幾多のドラマを観客に提供してきた。なかでも、60年代中盤のフォードとフェラーリの戦いは名高い。アメリカのデトロイトで巨大な帝国を築いたフォードは、マーケティングのためにその資金力をル・マンの勝利へと注ぎ込む。一方、自動車の黎明期からスピードレースに関わり、王者であり続けたフェラーリは、エンツォの類まれなるカリスマのもと、イタリアのプライドを賭けて戦う。本書は、エンツォ・フェラーリとヘンリー・フォードⅡ世を軸に、ジョン・サーティースあるいはキャロル・シェルビーといった現在では伝説となっているレース界のカリスマたちが、ル・マンあるいはレースを取り巻く環境といかに戦ったかを綴ったものである。

かつてフェラーリがフォードに買収されかかったことがある、ということぐらいは知っていたが、その前後にこれほどまでに感情的にこじれ、復讐劇とまでいえるような戦いが繰り広げられていたとは驚きである。巨大資本であるフォードを振り回し、イタリアのプライドを守ったフェラーリ。そのことに激怒し、レースでの勝利に固執する、ヘンリー・フォードⅡ世。そのオーナーに振り回されながらも、自分たちのプライドも守ろうとするエンジニア、レーサーたち。まさにレースがオーナーからドライバーまで、一つの直線で繋がっていた時代であり、どこかドライな現在のモータースポーツとはその”熱さ”がまったく異なるのも当然であろう。本書はその時代にル・マンに関わった人々のエゴと勇気を、見事に描いている。

本書はブラッド・ピット主演の映画原作だそうだが、CG満載のレース映画になんかせず、重厚な人間ドラマにしてほしい。だが今のハリウッドには無理だろうな。

初版2010/09 祥伝社/ソフトカバー

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書評<地球最後の日のための種子>

人類は農耕を開始して以来、休みなく栽培する植物を品種改良してきた。それが接ぎ木から遺伝子組み換えになっても、それは変わらない。世界が農業が大規模になり、グローバル化していく昨今、”害虫・病気に強くて収穫量の多い”わずかな数の品種を世界中で栽培する時代になっている。それは、例えば小麦にある病害が突発的に発生すると、全世界で食糧危機が起きることとなる。そんな事態に品種改良によって立ち向かうには、様々な品種を掛け合わせて、その病害に強い小麦を開発するしかない。そんな事態に備えるのが、北極圏の凍土の地下にある種子銀行、「ジーン・バンク」だ。ここには200万種の種子が保管されている。本書は植物の多様性を守るために世界中から種子を集め、ジーン・バンク設立のために身を費やした植物学者、ベント・スコウマンの物語である。

”世界から飢えをなくすために”という単純で、崇高な理念を実現するために、世界中から種子を集め、育種し、世界中に改良した小麦品種を配布したスコウマン。しかし、その短い人生の中で、様々な抵抗勢力と戦わなければならなかった。本書はその戦いの物語ともいえる。スコウマンが育ててきた国際機関の恩恵を忘れ、種子を国家の財産とする国家のエゴ。種子あるいは遺伝的特徴に特許権があると訴え、それを独占しようとする企業のエゴ。スコウマンたち植物学者が懸命に品種改良に取り組み、、世界の人口爆発から人々を救った”緑の革命”を否定する、環境保護論者たちのエゴ。そういった有形無形の抵抗を戦った結果、何度となく叫ばれた食糧危機を人類は乗り切っているのである。
本書には、スコウマンとともに一緒に戦ったものの仲間として、日本人と、日本の稲の品種が登場する。日本人として、誇らしい気分となる一冊でもある。


初版2010/08 文藝春秋/ハードカバー

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F-14A Completed

しばらくプラモ製作の記事を上げてませんでしたが、仕事が多忙だった8月を抜けてから急ピッチでコレ、作ってました。
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ハセガワ1/72F-14Aトムキャットです。ご存知、VG翼のアメリカ海軍艦上戦闘機。空母のデッキがホーネットだらけの現状にあっては、その存在感が懐かしい。
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ハセガワの新版トムキャットはこれまでも指摘しているとおり、バリエーション展開を意識し過ぎたゆえに機体のあちこちがバラバラのキット。久しぶりに製作しましたが、ここまで合いが悪かったっけ?と思わざるをえない。スジ彫りが苦手な自分は、サンディングで消えたスジ彫りを復活させた部分がヨレヨレです。
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マーキングはVF-111”Sundowners”の1988年仕様。ややキレイ目に作るのがパターンでしたが、今回は塗装で少し新たな挑戦をしました。グレーを何段階かで重ね吹きしてウェザリングとし、単調さを避ける方法です。ほぼ黒立ち上げでクレオスC315ガルグレーを吹いた後、パネルラインを避けて整備員が踏みそうな、触りそうなところをブラックを少量混ぜたグレー、ブラウンを少量混ぜたグレーを吹きつけます。その後、ややきつめにウォッシング。もう少し大胆でも良かったかな、と思わないでもないですが、それはロービジ機塗装のときにまた挑戦しましょう。
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今回、以外に苦労したのが資料。といってもディテールではなくて、ミサイルがグレーかホワイトかっていうわりと単純な部分だけど、意外と写真集なんかでは探してる年代の写真がないのね。つくづく、去年の引越しのときに航空ファンのバックナンバーを手放したのを後悔。

多忙で猛暑だった2010年の夏も突破しつつあるので、通常営業に戻していきますよ。

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書評<最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?>

20世紀末から、いわゆるBRICs諸国をはじめとして発展途上国といわれた国々が発展を遂げる一方、アフリカのサハラ諸国を代表に、10億人の人たちが最底辺の生活を強いられている。特にアフリカ大陸は、どの国も大きな問題を抱える。本書は主に経済の観点から、これらの国々がなぜ成長から取り残されているのかを分析する。それは、内陸国の罠、紛争の罠、天然資源の罠、ガバナンスの罠である。これらにとらわれている限り、最底辺を脱出することは不可能に近い。では、先進国のなすべきことは援助だけなのか?本書は積極的な介入も含めて、国際社会が為すべきことを提案する。

スポーツにしろ、経済にしろ、何度も「これからはアフリカの時代だ」という論調が聞こえてきたが、その時代はいっこうにこない。それどころか、グローバル化に伴い、貧富の差は固定しかけているように感じる。近年は天然資源の高騰により、豊かさを得るチャンスがあるのにも関わらず、である。本書はそうした疑問にある程度応えてくれる。そして、先進国のこれまでの援助や介入の失敗の原因がどこにあったかを分析し、先進国が為すべきことを提言するわけだが、少なくともミリオタ的知識が生かせる紛争介入については難しいだろう、といわざるをえない。”世界の警察”、アメリカは息も絶え絶えで、世論はアフリカなんぞに兵士の派遣と犠牲など許すまい。ヨーロッパの軍は一応”多様な事態に早急に対応できる、緊急展開・多目的派遣軍”への脱皮を目指してはいるが、アメリカ抜きでは戦争などできそうもないことをバルカン半島で証明してしまった。中国が表でも裏でも派手に活動するわけである。
本書で100%合意できるのは、アジアからの輸出に対し、保護政策をとるということ。衣料とか樹脂製品とか、軽工業製品を中国に輸出しまくられては、工業化など絶対ムリだろう。ブブセラみたいな民芸品くらいは、同じ大陸で生産できないもんかね。

初版2008/06 日経BP社/ハードカバー

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書評<日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率>

食料自給率が低下しているとして、農水省は”自給率向上キャンペーン”を電通とともに張っている。だが、カロリーベースの食料自給率の算出は問題が多く、生産高で見れば日本の農業は世界第5位の生産高であり、日本の”食糧問題”は存在しない。日本の農業が抱えるほとんどの問題は、農水省が自らの存在意義を見出すために作り出すためであり、むしろ日本の農業の未来は明るい。本書はこうした主張のもとに、日本の農業と食糧問題の本質を問う。

農水省も”ダメ官庁”の一つか!暇な農水省職員は人手不足の輸入検疫部署に全員異動しろ!と本書を素直に読めばそう思うわけだが、Amazonのレビューを見て考え直しました。物価の高い日本が生産高では上位にくるのは、考えてみれば当たり前のこと。日本は農業大国、まではとてもではないが言えない。
個人的経験でいうと、自給率はともかく、問題は小麦や豚肉の不公正関税かなあ。例えば豚肉の価格維持のための関税措置は、公正な業者ほど損をする仕掛けで、悪徳業者をはびこらせ、発展途上国からの輸入障壁になってる。農業保護が必要な場面も多いが、日本にはまだまだ不公正な補助金漬けであることだけは、本書に同意である。

初版2010/02 講談社/講談社プラスアルファ新書

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書評<ミミズの話>

ダーウィンの最後の研究テーマと著書は、ミミズと肥沃土の関係を記したものであった。ミミズが植物の成長に適した土壌造成の一環を担っていることはなんとなく一般知識としてはあるが、その実態はいまだ未解明な部分も多い。本書はアマチュア・ガーデニストでも著者が、ミミズコンポストなる生ゴミ処理機を中心とした個人的体験と数少ない学者たちとの交流をうまく混ぜ合わせながら、ミミズの持つ能力を解き明かしていく。

気持ち悪くて触りたくもないけど、あの生物が自然界でどんな役割を担っているのか知りたい、そんな矛盾した考えを抱かせる生物の代表がミミズなのではないかと思う。本書はそんなミミズの生態と、偉大なる自然界での役割を解説していく。とはいっても、ミミズの土壌形成能力を称えるだけの本ではなく、現在のアメリカ大陸やニュージーランドに存在するミミズはほぼ外来種であること、増えすぎたミミズは森の形成に害を為すことなども記載されており、その扱いと視点は公平だ。なかなか知ることのできないミミズの生態を知ることができる好著である。

初版2010/08 飛鳥新社/ハードカバー

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