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2010.09.16

書評<地球最後の日のための種子>

人類は農耕を開始して以来、休みなく栽培する植物を品種改良してきた。それが接ぎ木から遺伝子組み換えになっても、それは変わらない。世界が農業が大規模になり、グローバル化していく昨今、”害虫・病気に強くて収穫量の多い”わずかな数の品種を世界中で栽培する時代になっている。それは、例えば小麦にある病害が突発的に発生すると、全世界で食糧危機が起きることとなる。そんな事態に品種改良によって立ち向かうには、様々な品種を掛け合わせて、その病害に強い小麦を開発するしかない。そんな事態に備えるのが、北極圏の凍土の地下にある種子銀行、「ジーン・バンク」だ。ここには200万種の種子が保管されている。本書は植物の多様性を守るために世界中から種子を集め、ジーン・バンク設立のために身を費やした植物学者、ベント・スコウマンの物語である。

”世界から飢えをなくすために”という単純で、崇高な理念を実現するために、世界中から種子を集め、育種し、世界中に改良した小麦品種を配布したスコウマン。しかし、その短い人生の中で、様々な抵抗勢力と戦わなければならなかった。本書はその戦いの物語ともいえる。スコウマンが育ててきた国際機関の恩恵を忘れ、種子を国家の財産とする国家のエゴ。種子あるいは遺伝的特徴に特許権があると訴え、それを独占しようとする企業のエゴ。スコウマンたち植物学者が懸命に品種改良に取り組み、、世界の人口爆発から人々を救った”緑の革命”を否定する、環境保護論者たちのエゴ。そういった有形無形の抵抗を戦った結果、何度となく叫ばれた食糧危機を人類は乗り切っているのである。
本書には、スコウマンとともに一緒に戦ったものの仲間として、日本人と、日本の稲の品種が登場する。日本人として、誇らしい気分となる一冊でもある。


初版2010/08 文藝春秋/ハードカバー

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