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書評<フォードvsフェラーリ 伝説のル・マン>

ル・マン24時間耐久レースは幾多のドラマを観客に提供してきた。なかでも、60年代中盤のフォードとフェラーリの戦いは名高い。アメリカのデトロイトで巨大な帝国を築いたフォードは、マーケティングのためにその資金力をル・マンの勝利へと注ぎ込む。一方、自動車の黎明期からスピードレースに関わり、王者であり続けたフェラーリは、エンツォの類まれなるカリスマのもと、イタリアのプライドを賭けて戦う。本書は、エンツォ・フェラーリとヘンリー・フォードⅡ世を軸に、ジョン・サーティースあるいはキャロル・シェルビーといった現在では伝説となっているレース界のカリスマたちが、ル・マンあるいはレースを取り巻く環境といかに戦ったかを綴ったものである。

かつてフェラーリがフォードに買収されかかったことがある、ということぐらいは知っていたが、その前後にこれほどまでに感情的にこじれ、復讐劇とまでいえるような戦いが繰り広げられていたとは驚きである。巨大資本であるフォードを振り回し、イタリアのプライドを守ったフェラーリ。そのことに激怒し、レースでの勝利に固執する、ヘンリー・フォードⅡ世。そのオーナーに振り回されながらも、自分たちのプライドも守ろうとするエンジニア、レーサーたち。まさにレースがオーナーからドライバーまで、一つの直線で繋がっていた時代であり、どこかドライな現在のモータースポーツとはその”熱さ”がまったく異なるのも当然であろう。本書はその時代にル・マンに関わった人々のエゴと勇気を、見事に描いている。

本書はブラッド・ピット主演の映画原作だそうだが、CG満載のレース映画になんかせず、重厚な人間ドラマにしてほしい。だが今のハリウッドには無理だろうな。

初版2010/09 祥伝社/ソフトカバー

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