書評<ミミズの話>
ダーウィンの最後の研究テーマと著書は、ミミズと肥沃土の関係を記したものであった。ミミズが植物の成長に適した土壌造成の一環を担っていることはなんとなく一般知識としてはあるが、その実態はいまだ未解明な部分も多い。本書はアマチュア・ガーデニストでも著者が、ミミズコンポストなる生ゴミ処理機を中心とした個人的体験と数少ない学者たちとの交流をうまく混ぜ合わせながら、ミミズの持つ能力を解き明かしていく。
気持ち悪くて触りたくもないけど、あの生物が自然界でどんな役割を担っているのか知りたい、そんな矛盾した考えを抱かせる生物の代表がミミズなのではないかと思う。本書はそんなミミズの生態と、偉大なる自然界での役割を解説していく。とはいっても、ミミズの土壌形成能力を称えるだけの本ではなく、現在のアメリカ大陸やニュージーランドに存在するミミズはほぼ外来種であること、増えすぎたミミズは森の形成に害を為すことなども記載されており、その扱いと視点は公平だ。なかなか知ることのできないミミズの生態を知ることができる好著である。
初版2010/08 飛鳥新社/ハードカバー
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