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2010.10.05

書評<武器なき“環境”戦争>

地球温暖化をはじめとして、環境を巡る問題は今や人類共通の課題としてメインストリームとなりつつある。だが、各国が掲げる美辞麗句の羅列の裏では、国益を追求せんとして熾烈な”外交戦争”が繰り広げられている。特にEU各国は主導権を握るべく、さまざまな国際ルールの提案を続けている。こうした環境問題を巡る外交戦争を、今や時事問題の解説では右に出るものがいない池上彰氏と、外交問題の解説には定評のある手嶋龍一氏が対談形式で解説していく。

両氏ともにNHKでニュース解説を担当した間柄であり、二酸化炭素の排出権取引など分かりにくい京都議定書のルールなどを噛み砕いて解説し、環境問題が日本のマスコミが報道するようなキレイごとではなく、熾烈な駆け引きであることを指し示していく。両者が褒めあう場面は余計だと思うが、概ねその解説は的を射ていると思うし、対談形式なので分かりやすい。
個人的には人為的地球温暖化論の懐疑派なので、将来にわたって排出権取引などの国際的枠組みが機能するかは疑問を持たざるをえないが、それでも環境問題によってヨーロッパが”パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)”という現在の国際的な力関係を崩そうとしているのは間違いないところであろう。そんな状況で、何においても後手後手の日本の外交の頼りなさも著者の指摘どおりである。外交での失点は結局のところ、我々庶民が税金で代償を払わなければならないのだから、外務省にはもうちょっと国益というものを考えてほしいものであるし、我々もしっかりと監視していく必要があるであろう。

初版2010/09 角川SSコミュニケーションズ/角川SSC新書

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