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書評<誰も語らなかった防衛産業>

アメリカの武器供与から始まった自衛隊の正面装備は、日本の工業力の回復と歩調を合わせるようにして、国産に切り替わっていった。安全保障上の観点から、また経済的な観点からも、兵器をなるべく国産にするのは望ましいことではある。しかし、単年度契約による少数生産体制によって購入されるそれらの兵器は、大量生産される武器輸出大国の”商品”に比べて高価であるとの批判がつきまとっていた。
日本の経済が成長基調にあり、”安定した”潜在的脅威があった冷戦時代はそれが許された。だが、ソ連は崩壊し、国家間の大規模な戦争の発生は想定しづらくなり、テロの脅威は残しつつも各国は国防費を削減し、世界の武器市場はシュリンクしていく。ヨーロッパに比べると、なお脅威の残る日本周辺であるが、国家財政の悪化や防衛庁幹部と一部の企業との癒着が発覚したことなどにより、日本もまた防衛費の削減とその使い道の検証がせまられる。
そうした状況が、日本の防衛産業を圧迫している。防衛省の契約企業、いわゆるプライム・メーカーは世界に冠たる大企業も多いが、それを支えているのは中小のパーツメーカー、ひらたくいえば町工場であることは、自動車などの他の産業と変わらない。兵器の開発・生産は経験の積み重ねが多いところもあり、その技術が失われる事態は深刻である。本書はそうした防衛産業を支える町工場を取材し、その現況とそれぞれのモノ作りに関わる人たちの思いを伝えている。

前置きが長くなったが、本書が投げかけている問題は深刻である。評論家の中には安価な輸入品の購入、あるいは関連メーカーの大同合併を訴えている人もいるが、技術の蓄積の散逸や雇用の消失など、とてもではないが賛成できるものではない。それは極端な例にしても、安全保障を論じると思わず大上段に構えた理論書になりがちだが、本書はそこを抑え目にして、生産現場の今現在の空気を伝えようとしている点に好感が持てる。防衛産業に長年関わってきた職人さんたちの考えを知るには最適だ。

初版2010/08 並木書房/ソフトカバー

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