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2010.11.17

書評<恐竜再生>

かつての名作「ジェラシック・パーク」では、太古の琥珀に眠っている蚊が吸った血液から恐竜のDNAを取り出し、カエルの卵に移植することで恐竜を作り出そうとした。これはもちろんフィクションであり、実際には様々な困難が伴う。だが、「ジェラシック・パーク」でサイエンス・アドバイザーを務めた生物学者である著者は、胚の研究を対象とする「発生進化学」その他の各種専門分野の研究者と協力し、恐竜の直接的な子孫である鶏の胚をコントロールすることにより、”恐竜のようなもの”を生み出そうとしている。本書は発生進化学の発展と現在を紹介し、それが可能にしようとしていることを解説する。

DNAにコードされている遺伝子は、基本的には”スイッチ”である。例えば、「手」の発達段階において、指を伸長させるスイッチが入り、指の隙間がそれ以上発育することがないようスイッチが切られることにより、我々が持つ「手」の形となる。これが積み重なり、最終的にホモ・サピエンスになったり、類人猿になったりするといっても過言ではない。では、恐竜の子孫たる鶏の胚のスイッチを制御すれば、恐竜を生み出すことができるのではないか?これが本書の趣旨である。古生物学といえば、荒れ地で粛々と化石を発掘するイメージであるが、分子生物学や発生学との”コラボ”により、太古の生物を”再現”するところにまで来ているのである。本書は、そうした古生物学の現在を垣間見ることができる1冊である。

初版2010/10 日経ナショナルジオグラフィック社/ハードカバー

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