書評<オバマの誤算 「チェンジ」は成功したか>
2年前、バラク・フセイン・オバマ大はアメリカ国民のみならず、世界中に歓迎されアメリカ大統領に就任した。しかしながら、時を経るに従い支持率は低下し、2010年の中間選挙では所属政党の民主党は上院・下院で大敗した。景気が思ったように回復しないという現実があるにしろ、アメリカ国民の心変わりは早すぎるようにも感じる。本書は、オバマ政権の支持率原因を探っていく。
大衆に支持されて当選したリベラル派大統領にも関わらず、倒産した大企業を政府が支援することを指示。一方で”グリーン・ニューディール”という聴き心地のいい政策は予算不足で破綻しつつあり、失業率は一向に回復しない。「核なき世界」を唱えながら、臨界前核実験を相変わらず繰り返す。まあ、支持率が下がっても当然ちゃ当然なのだが、本書の著者は支持率低下の遠因に根強い人種差別を導き出す。オバマのその複雑な出自が多民族国家アメリカの象徴であると同時に、陰謀論を生み出し、ときおり議員からもポリティカル・コレクトネスを飛び越えて、不穏当な発言が飛び出す現実を著者は指摘する。確かに、まだアメリカは保守的な白人の国のようである。
初版2010/12 角川書店/角川oneテーマ21
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