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書評<破壊する創造者―ウイルスがヒトを進化させた>

ウイルスは不可思議な生物、あるいは物質である。DNAを持つものの自ら増殖はできず、宿主のDNAに紛れ込んで増殖をはかり、その過程で様々な影響を生物にもたらす。人類にとって無限といっていいほどのウイルス性疾患がその代表例であろう。だが、ウイルスは単に病原菌的な存在であるだけでなく、そのDNAの存在ゆえに生物の変異や進化に大きく関係することが近年の研究で分かってきた。本書は医師でもある著者がウイルス研究の最前線に立つ科学者たちをインタビューすることにより、進化論や臨床医学など多角的な面からウイルスと生物の関係を明かしていく。

人類のゲノム解析が終了したとき、一番の驚きは全ゲノムの半分以上がジャンクであり、機能性を持たないことであった。そのジャンクは何がもたらしたのか?それこそがウイルスであり、遺伝子に介入するということは生物の進化に大きな影響を与えることは想像に難くない。ウイルスは宿主にとって病原となる破壊者でありながら、変異に影響をもたらす創造者なのである。本書はこうした知られざるウイルスの姿を知ることができる。特にガンをはじめとした医療に関する章は、著者が医者だけあって詳細であり、ウイルスといえば感染症絡みという我々の単純な思い込みを正してくれる。自己増殖できないゆえにウイルスを無生物と判断する科学者も多いが、DNAの存在とその変異の早さはやはり生物と判断すべきであり、疾病の面だけでなく、生物としてもっと注目されるべき存在であろう。

初版/2011/01 早川書房/ハードカバー

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Comments

まさに「SFの世界」のように想像を掻き立てられるのが「ウイルス」などの方々ですよね。
「マクロファージ」の形が宇宙船のようでとても不思議です。

Posted by: 高○ | 2011.02.08 at 20:32

>高○さん
ウイルスが地球外からやってきたものではないか、というのは割とマジメに語られていますよね。知れば知るほど、フシギなのがウイルスです。

Posted by: ウイングバック | 2011.02.09 at 20:25

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