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2011.07.25

書評<生命の起源を宇宙に求めて―パンスペルミアの方舟>

かの哲学者、アリストテリスは生物学者でもあり、「自然発生説」を唱えて後世で批判を受けた。生物は無からは発生せず、生物は生物から発生することは生物学のセントラル・ドグマの1つである。では、原初の生物はどこから生まれたのか?最初の最初だけ”偶然”なのか?現在の学説では有機物が多量に溶け込んでいた原始地球の海中あるいは海底の熱水噴水口だとされているが、どちらも否定されても仕方がない根拠もあり、決定力に欠ける。
そこで、本書では生命の起源を宇宙に求める。学術的には異端ともいえる”パンスペルニア説”である。生命の端緒は彗星や隕石によって宇宙からもたらされたという説である。宇宙と大気圏突入という過酷な環境に生命は耐えられないとして異端とされているわけだが、本書ではこのパンスペルニア説の意外な”まっとうさ”を説明していく。そして、宇宙からもたらされたとされるその原初の生命はそもそもどのように生まれたのかを探っていく。

パンスペルニア説はSFやアニメでときどき用いられるモチーフであるが、そのアニメの中でさえ”異端”として扱われることがあるくらい、一般的な考え方ではない。だが、原初の生命を研究すればするほど、原初の地球から生まれたとは考えにくくなることが本書の前半で説明される。著者が極限環境で生きる菌類の専門家だけに、それは非常に説得力がある。そこから、生命が過酷な宇宙空間を旅できるのか、そして、そして生命はどこからどのように生まれたのか、著者の仮説が明かされる。異端学説とはいえ、様々な研究が既になされており、こちらがなぜメインの学説にならないかがフシギと感じさせるほど面白い。
ただ最後はやや疑念が残る。ややネタバレになるが、本書では結局、生命の端緒を規模の大きな”雷撃”に求める。ならば、それは地球で起きてもいいような気もするのも確か。古生物学の奥は深い。

初版2010/11 化学同人/ソフトカバー

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