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2011.07.11

書評<三葉虫の謎―「進化の目撃者」の驚くべき生態>


古生代の化石でもっともよく発掘されるのが、現在の節足動物の親戚である三葉虫だ。世界中に広く分布することから至準化石として地層のクロノメーターとなり、目やトゲの存在の有無から、生物の進化の研究材料として広く用いられている。
本書は三葉虫に魅入られた古生物学者である著者が、三葉虫にまつわる様々なエピソードをを地学と進化論を織り交ぜながら解説している。それは単に古生物学にとどまることなく、三葉虫に関わってきた人物や三葉虫の化石が産出される世界の様々な土地の紹介にまでおよんでいる。

言葉巧みに地学と古生物学の世界に読者を誘うフォーティの本業が三葉虫の研究である。なので、その知識は果てしなく深い。三葉虫の生態を解き明かすという本題と同時に、フォーティの先達や同輩の古生物学者たちの”生態”や、世界の様々な化石発掘地の様子までうかがい知ることができる。
個人的には、自分が古生物学を趣味とするきっかけの1つであるS.J.グールドの「ワンダフル・ライフ」で取り上げた”カンブリア紀の大爆発”がフォーティによって全否定まではいかないにしろ、やや批判的に捉えられていたこと、そしてそれが正しく思えたことが印象的であった。信奉してきた進化論の一つはもはや古いようである。古生物学は決して固定された学問ではなく、新たな化石の発掘やその研究により、”進化”する学問であること再確認させてくれたのが本書であった。

初版2002/09 早川書房/ハードカバー

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