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2011.08.10

書評<スナイパー---現代戦争の鍵を握る者たち>

イラク戦争終結以後のバグダッドを中心として、市街地を舞台とした非正規戦闘が今も続いている。遮蔽物が多く、民間人とテロリストの区別がつかない戦場では、アメリカ軍が得意とする火力を集中させた機械化戦闘は展開しづらく、歩兵を中心とした掃討戦や遭遇戦が続発することなり、部隊に配属される狙撃手たちの役割が従来に増して重要になっている。本書はバグダッドで実戦を経験した狙撃手たちの証言を中心にして構成され、イラクでの市街戦の実態と、彼らがいかに戦っているのかを明かしていく。

市街戦でのスナイパーたちの重要性はスターリングラードなどで証明されているが、本書では現代の非正規戦闘における市街戦においての狙撃手たちの戦闘をかいま見ることができる。ボルトアクションライフルを手にワンショット・ワンキルを狙う従来のスナイパーのイメージはもはや古い。少数精鋭の部隊で行動し、近距離ではM4アサルトライフル、超遠距離では12.7mm弾を使用するアンチマテリアル・ライフルと多種類の武器を使いこなし、その存在自体で地域全体を威嚇し、ゲリラたちの行動を制約する。本書は実戦を経験したスナイパーたちのインタビューが中心となるので、その証言はときに生々しい。
スナイパーたちのイメージといえば、現代戦では心理面も大きく異なるようである。素人目では戦場の中で”殺し屋”的なイメージが強く、殺人という心理面での負担が気になる。だが、敵の存在が視覚的・心理的に見えにくい現代戦においては、味方を殺すIEDを設置するテロリストの射殺は、かえって他の兵科より自分の役割がはっきりさせるようで、どのスナイパーも少なくともインタビューでは心理的ストレスを感じさせない。ここらへんも対テロ戦争が従来の正規戦闘との違いを感じさせるところである。

初版2011/06 河出書房新社/ハードカバー

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