書評<ふしぎなキリスト教>
現代の西洋文明とは、キリスト教を中心とした欧米文化といっても言い過ぎではないだろう。一応、先進国として西洋文明を謳歌する日本人だが、おおよそキリスト教の価値観を理解できず、ゆえに多くの場合でとまどってしまう。本書は2人の社会学者の対話形式により、キリスト教の祖となるユダヤ教とはどんな宗教か、イエス・キリストとは何者なのか、キリスト教の聖典である聖書に書かれている内容とはどんなものか、基本的な解釈の仕方を解説していく。
”テロとの戦い”が世界の脅威として表面化したとき、著名な学者先生はイスラム教とキリスト教の「文明の衝突」と表現した。しかしながらキリスト教もイスラム教も同じ神を信じる一神教であり、八百万の神を信じる大多数の日本人の方がよほどキリスト教との「文明」が異なる。その前提にたち、本書はその日本人が理解しづらいキリスト教の基本的なことを解説する。「神の試練って何?」「偶像崇拝の禁止」「イエスは実在の人物か?」などなど。社会学者の橋爪大三郎氏が聖書を現代の価値観に合わせて噛み砕くので、なるほど分かりやすく、目からウロコが落ちる思いがする記述もあり、面白い。
とはいえ、本書の冒頭でユダヤもキリストもイスラムもほとんど同じ宗教といいながら、何故あれほどまでにお互い忌み嫌うのかまでは手が届いていない。日本人がキリスト教を理解するうえでホントに知りたいのはそこのところだと思うんだけどな。
初版2011/08 講談社/講談社新書
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これはオレだけの価値観、似てるって言われるのがイヤってのはどうでしょう?
Posted by: 高○ | 2011.09.05 22:40
>高○さん
お互いがそう思ってるんでしょうね。だから”異教”って言葉がある。
Posted by: ウイングバック | 2011.09.06 21:15