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2011.10.15

書評<スノーボール・アース>

19世紀以後、地質学者たちは地球の岩石に残された証拠をもとに、太古からの地球の歴史を探ることを模索してきた。その中で、どうしても解けない謎があった。赤道付近で氷河が移動した後に残される”ドロップ・ストーン”が見つかっているのだ。地球が赤道付近まで”全球凍結”したと仮定しなければ、この謎は解けない。この「全地球凍結仮説(スノーボール・アース)」は正しいのか否か?本書は全地球凍結仮説の構築と証明、そしてそれに反論を挑んだ地質学者たちの物語である。

前述したように、本書はいわゆる「全地球凍結仮説」の解説書ではなく、それに関わる科学者たちの物語である。本書の主人公といえるポール・ホフマンは頭脳明晰で求道者ゆえに敵も作りがちな頑固者。他にも、画期的な理論を唱えたのにも関わらず、その才ゆえか刺激を求めて多分野に移る者、偏屈な人物が多い科学者の中にあって、愛すべき人柄の者、センセーショナルな理論とカリスマ地質学者に、あえて反論を挑む者。個性豊かな科学者たちの冒険の書といっていいものだ。科学解説書というと、ともすれば退屈になりがちなのだが、本書はそのわくわくするような知的冒険がよく描かれているが故、物語を読むように一気に読み進められる。
文庫版として、ハードカバー出版時からの「全地球凍結仮説」のその後や、類書も掲載されており、親切な一冊である。

初版2011/10 早川書房/ハヤカワ文庫NV

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