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書評<ミトコンドリアが進化を決めた>

ミトコンドリアは生物の細胞の中で、生物活動のエネルギーであるATPを生産する小器官である。学校の生物の時間ではあっさりそう説明されるわけだが、ミトコンドリアは謎に満ちた存在である。ミトコンドリアは細胞核外で唯一DNAを持つ小器官であり、そこからはるか昔に原核細胞がミトコンドリアを取り込んだことが推測されるわけだが、それはなぜ起こったのか?ミトコンドリアは卵子からしか受け継がれず、そこから”ミトコンドリア・イブ”と呼ばれる現生人類の祖先を辿れるわけだが、なにゆえそのような淘汰が起こるのか?こうしたミトコンドリアの謎は、原核細胞から真核細胞への進化、あるいは両性の存在する原生生物への進化など、生物の進化に大きく関わることが近年の研究で分かったきた。本書はそうした最新の仮説を紹介し、ミトコンドリアがいかに進化において重要な役割を果たすかを明かした解説書である。

生物の進化でもっとも謎とされ、かつその期間が長いのは、単細胞の原核生物の誕生から我々の直接の先祖である真核細胞が登場するまでの35億年である。その長い道のりの間に、ミトコンドリアがどのような役割を果たしているのか?本書はミトコンドリアのエネルギー生成の仕組みの解説を手始めに、その謎にせまる。そもそも、ミトコンドリアというエネルギー生成器官がなければ真核細胞は生まれなかったとの本書の前半部分からして衝撃的であり、その後も進化というものがミトコンドリアに左右してきたかが解き明かされていく。「ミトコンドリアが進化を決めた」というタイトルは決してオーバーではない。真核細胞の一構成要素を超えた存在であるミトコンドリアの”魅力”が存分に詰まった良書である。

初版2007/12 みすず書房/ハードカバー

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書評<自分の体で実験したい―命がけの科学者列伝>

科学の発展は、実験なしにははじまらない。だが、人体の仕組みや耐久力、あるいは感染症の原因など、人間に関わる謎の追求には危険が伴う。そういった未知の危険に他人をさらすわけにはいかない。だから、科学者たち自分自身で人体実験をした。人体はどこまで高温に耐えられるか?人体にとって危険な気体は何か?感染症のルートは?本書はそういった謎の解明のために自分の身を危険に晒しながら、科学とそれを実学とすることに尽力した10人の科学者たちのエピソードを集めたものである。

現在を生きる我々は、短い間なら高温あるいは低温に晒されても体温が一定であることを知っているし、食べたものがどのような過程で消化されるかを知っている。このように人体に関する基本的な事柄からして、科学者たちの”蛮勇”が研究の道を切り拓いていった。本書には科学者たちの好奇心や探究心、あるいは自己犠牲や献身といった感情がずっしり詰まっている。
ミリオタ的には「人体が加速度にどれくらい耐えられるか?」を探求したジョン・ポール・スタップの物語だけでも読む価値があるだろう。彼なくしてはきちんと機能するシートベルトもイジェクション・シートもなかったし、我々が日常で使う自動車の安全性の追求も彼の研究なくしてはなかった。そんな物語がいっぱい詰まった良書である。

初版2007/02 紀伊國屋書店/ハードカバー

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タミヤフェア2011に行ってきた

本来なら東京で開催されているJMCに参加したかったのですが、お仕事の事情で静岡にいなければならず、ちょっと残念な週末。なので?ちょっと空き時間にタミヤフェア2011に行ってきた。
タミヤフェアはツインメッセで開催されるタミヤメインのホビーショー。小さいお子さん向けの工作教室、女の子向けのデコレーション体験、おじさんたちのラジコンとスケールモデル関連と、様々な企画が並ぶのはタミヤならでは。
当然のことながら、プラモ関係をちょっとだけレポート。
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まずは<プラモデルができるまで>ということで、CAD/CAM画像や金型の展示、職人さんの鏡面仕上げの実現。CAD/CAMって実際見るとすごいね。上下左右、分解、なんだってできる。このデータがあればスケール違いを発売するのは簡単にできるんですか?と質問したけど、プラの肉厚の関係で補強が必要だったり、インジェクションの限界でディテールを省略したりと、そう簡単じゃないんだって。
あと、金型磨きにはモーターツール使わないですか?と質問すると、モーターツールは必ず削りすぎてしまうので、どうしても手作業だそう。マニシングマシンで削りだした大きな金型からして手作業だそうで、まだまだ技術立国日本、健在です。

その技術が詰め込まれたのが会場発表の1/72零戦52型。
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スケールモデルの新商品の中心は1/350戦艦<大和>だったけど、エアモデラーとしてはこのベーシックなキットの方が要注目。1/32のCADデータを流用して作りやすさとディテールを両立させているそうで、初心者が手に取るには最適そう。
その隣には山本五十六長官のフィギュア付きの1/48一式陸攻。
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<大和>もそうだけど、タミヤは12/23公開の映画「連合艦隊司令長官 山本五十六」と強力タイアップしているらしく、軍服や長官の遺品展示、前売り券の発売と大きなブースを設けてアピール。

実車展示も様々ありましたが、その中からレースカー、メルセデスSLS AMG GT3と日産リーフ ニスモRCで締め。
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SLSよりリーフRCの方がでかいのね。SLSはともかく、リーフはカーモデルで発売する気なのかしら?

ちなみにお持ち帰り品はコレ。
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会場限定、新潟の職人さんが製作されたピンセット。今現在使ってる、スイス製のピンセットに匹敵するタッチだったので思わず購入。こういうのは今でもスイスやドイツ製が一番、みたいなこともいわれますが、日本製もなかなかです。これも含めて、なんか工業製品の勉強に行ったみたいな、充実した時間でした。


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書評<“不機嫌な”太陽―気候変動のもうひとつのシナリオ>

地球温暖化による危機が叫ばれる昨今だが、46億年におよぶ地球の歴史を遡れば、大規模なものから小規模なものまで、気候変動が繰り返されていることが証明されている。だが、気候変動の要因を説明する様々な学説は、どれも完全ではない。本書の著者はそれに挑戦しようとしている。著者が気候変動の根本的な要因としているのは、天の川銀河で繰り返される、超新星の爆発とそれにより放出される宇宙線だ。その宇宙線が大気をたたくことによって形成される雲量の変化が、気候変動の要因だというのである。地球の磁気圏が太陽風から地球の生命を守るように、太陽の磁気圏が太陽系を宇宙線から守っているわけだが、太陽活動の大小により、地球に降り注ぐ宇宙線が増減、それが雲量の変化をもたらす。これが繰り返す気候変動の要因であると著者は主張するのだ。そして、著者はさらに踏み込む。太陽系自体の天の川銀河での軌道、すなわち渦巻き状銀河の”腕”に出入りすることににより宇宙線が増減し、”腕”に入って放射線が飛躍的に増加した時期が、長い氷河期、そして全地球凍結と重なるというのである。本書はいまだ異端である「気候変動の宇宙線原因説」の入門書である。

個人的に地球生命の長い歴史と気候変動に興味があり、様々な学説を取り扱う本を読んできたが、気候変動をもっとも簡素に説明し、なおかつ納得にたる学説に出会ったと感じさせてくれたのが本書である。二酸化炭素を原因とする人為的地球温暖化はもはや検討するに足りず、太陽活動の変化こそが気候変動の本命と個人的に考えていたのだが、その太陽が放出する太陽風そのものではなく、太陽風の増減により変化する宇宙線の増大こそ気候変動要因の本命とする本書の学説は、非常に新鮮だ。繰り返す気候変動、繰り返す氷河期、繰り返す生命の大量絶滅が天の川銀河と太陽系の関係により、シンプルに説明できるのだ。地学・生物学・天文学が積み重ねた研究の歴史が、著者が主張する学説を後押しする。
ただし、あまりにも明快すぎて、にわかに信じがたいのも確かである。ものごとは複雑で、たった一つの要因がすべてを左右することはあり得ないというのが、自分の信条。もう少し、研究の成果を待ちたい。

書評2010/03 恒星社厚生閣/ソフトカバー

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書評<まおゆう魔王勇者 エピソード1 楡の国の女魔法使い>

ネット連載で大反響をおこした「まおゆう」のサブエピソード第一弾。勇者のパーティで一番の変わり者である魔法使いはどのようにパーティに加わったのか?そのエピソードが明かされる。

正直に書きましょう。本書は「ドラマCDが特典でついてくる」わけですが、どちらかというと「ドラマCDにサブブックが特典についてくる」感じでしょうか。自分と同じくテキストを読みたい、という方には向きません。ではなぜ購入したかと言うと、書店での扱いが「ご購入希望の方はレジにこのカードをお持ちください」だったため。いい年してるのに気の小さいオレはレジで「やっぱりやめた」とは言えませんでした。今どきの書店、オタクの気の小ささまで読んで商売してます。さすがです。

初版2011/10 スクエアエニックス/ソフトカバー

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書評<地雷を踏む勇気 人生のとるにたらない警句>

日経ビジネスオンラインの連載「ア・ピース・オブ・警句」をまとめたもの。やや長めのコラムで、皮肉たっぷりに時事問題を扱っている。日経ビジネス関係の連載ということだが、取り上げる問題は君が代斉唱やフジテレビの”韓国推し”など、ネットで不用意な発言をしようものなら”炎上必死”であるものの、固いものではない。それらに対して、やや”ズラした”角度からものを見る著者の感性と、それをシャレにまとめる能力はうらやましい限り。連載期間に東日本大震災を挟んでいるので、その前後のマスコミや政治の振る舞い、当然ながら原発の問題も取り上げられているので、コラムを読んでその当時の自分の感じ方と比べてみるのも面白い。
自分としてはおおむね著者の視点やまとめに同意するが、原発を含むエネルギー問題に対して「昭和50年代に戻ってみれば」としてまとめてあるのは、やや年齢を感じさせるかな。そうするには、世界がせまくなりすぎてると思う。

初版2011/11 技術評論社/ソフトカバー

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F-18A Completed

アカデミー1/72F-18Aホーネット”VFC-12 FightingOmars”、完成しました。
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アグレッサーと呼ばれる仮想敵機を専門とする部隊は、ベトナム戦争航空戦の教訓を元に生まれました。F-4ファントムをはじめとした当時の最新鋭機が、旧式のMigに空中戦でかなり手こずったのです。これは機材やROE(交戦規則)の問題もありますが、何より実践的な空中戦の訓練を実施していなかったことが問題視されました。こうして生まれたアグレッサー部隊は仮想Migを演じるため、小型のA-4やF-5Eを機材としましたが、こうした機材の老巧化とロシアの新鋭機の配備に伴い、主力機種のF-18もアグレッサー部隊に導入されてきました。
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VFC-12はそうした部隊の1つ。Mig-29あるいはSu-27といったロシア製の最新鋭機の迷彩をまとい、仮想敵機が用いる機動を模倣して実戦部隊の相手を務めます。
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キットはアカデミーの1/72キットに、LoneStarさんちのレジン製フラップダウン・ウイングを組み合わせて油圧アウトの状態を再現。アカデミーのキットは表面の梨地の他は文句のつけようがないキット。仮組みを慎重にすれば、さほどサンディングの必要もなし。LoneStar謹製の主翼も見えるところには気泡もなく、離型剤を落とした後はプラパーツ同様にピタリと胴体と合います。
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VFC-12の塗装はMig-29を模したもの。TwoBobsのデカールを使用しています。クレオスC305ガンシップグレーとC306グレーをやや明るめにして吹きつけています。Mig-29にシルエットを似せるための主翼前縁やLERXの塗装が面白いので採用したのですが、やや地味ですな。アグレッサーは使い古しの機体が多いので、ウェザリングはやや強めにしています。
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ホーネット祭り向け作品第一弾となります。ホーネットばっか作ってもなんなので、次は変化球行きますかね。

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