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2011.11.30

書評<ミトコンドリアが進化を決めた>

ミトコンドリアは生物の細胞の中で、生物活動のエネルギーであるATPを生産する小器官である。学校の生物の時間ではあっさりそう説明されるわけだが、ミトコンドリアは謎に満ちた存在である。ミトコンドリアは細胞核外で唯一DNAを持つ小器官であり、そこからはるか昔に原核細胞がミトコンドリアを取り込んだことが推測されるわけだが、それはなぜ起こったのか?ミトコンドリアは卵子からしか受け継がれず、そこから”ミトコンドリア・イブ”と呼ばれる現生人類の祖先を辿れるわけだが、なにゆえそのような淘汰が起こるのか?こうしたミトコンドリアの謎は、原核細胞から真核細胞への進化、あるいは両性の存在する原生生物への進化など、生物の進化に大きく関わることが近年の研究で分かったきた。本書はそうした最新の仮説を紹介し、ミトコンドリアがいかに進化において重要な役割を果たすかを明かした解説書である。

生物の進化でもっとも謎とされ、かつその期間が長いのは、単細胞の原核生物の誕生から我々の直接の先祖である真核細胞が登場するまでの35億年である。その長い道のりの間に、ミトコンドリアがどのような役割を果たしているのか?本書はミトコンドリアのエネルギー生成の仕組みの解説を手始めに、その謎にせまる。そもそも、ミトコンドリアというエネルギー生成器官がなければ真核細胞は生まれなかったとの本書の前半部分からして衝撃的であり、その後も進化というものがミトコンドリアに左右してきたかが解き明かされていく。「ミトコンドリアが進化を決めた」というタイトルは決してオーバーではない。真核細胞の一構成要素を超えた存在であるミトコンドリアの”魅力”が存分に詰まった良書である。

初版2007/12 みすず書房/ハードカバー

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