書評<「お手本の国」のウソ>
フィンランドの”競争をしない”教育制度、先進国の中で珍しく”少子化を克服した”フランスの福祉政策。ニュージーランドの徹底した自然保護政策。これらは、あらゆる方面で手詰まり感がある日本の政策に対して、成功を収めているといわれる各国の政策だ。だが、それらは無条件に日本が”お手本”とすべきものなのか?本書は陪審制や二大政党制などお手本にした国々、またはこれから日本が政策を見直す際にお手本にすべきとされる国々の実態を紹介する。
ワイドショーや討論番組で見ていてムカムカすることの1つは、評論家諸氏がやたらと”うまくいっている国々”を持ち出して日本をクサすこと。心酔している国があるのは個人の自由だが、はたから見ると素晴らしいそれらの国々の政策を本当に日本に当てはめたとき、うまくいくかどうか考えたことがあるのだろうか?と感じざるをえない。本書はそうした疑問に少しだけ応えてくれる。例えばニュージーランドの自然保護制度。移民により絶滅寸前の原生動物を守るため、ネズミなど外来生物を容赦なく、軒並み駆除していく。上空から毒物散布までするそのやり方は、それもまた人間のエゴに過ぎないのではないか?そう思わざるをえない。
安易に海外の政策を持ち出すことがいかに愚かなことか、考えるきっかけとなる新書である。
初版2011/12 新潮社/新潮新書
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