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書評<卵をめぐる祖父の戦争>

ときは大祖国戦争、ドイツ軍包囲下のレニングラードで暮らす17歳のレフはある夜、凍死したドイツの降下猟兵を発見する。死体からナイフを奪取したレフは夜間外出禁止令を破ったとして、憲兵に捕まり懲罰牢に入れられてしまう。そこで彼は饒舌な脱走兵コーリャと出会う。翌朝、彼らを待っていたのは銃殺刑ではなく、NKVDの大佐の娘の結婚式のために卵を探す任務だった。2人は恐怖と飢餓が支配するレニングラードを冒険することとなる。

現代の作家デヴィッドが祖父に戦争の話を聞く場面から始まる冒険小説。レニングラードの包囲戦を描いたフィクション、ノンフィクションは数あれど、これほど奇妙な戦争を描いたものはないだろう。詩人の父を持つゆえか、危機に際して思索が深いレフと、誰もが危機におびえて生きる中で、饒舌に持論をぶつコーリャのコンビが、レニングラードを駆け巡る様は、どこかユーモアを感じさせる。だが、彼らがそこそこで出会うのは戦争と飢餓とそれにまつわる狂気だ。例えば食人鬼は狂気そのものだが、戦争の当事者であるナチスもソ連のレジスタンスもどこか常軌を逸している。ユーモアと狂気、その奇妙な組み合わせが、物語をなんとも味わい深いものにしている。先に発売された大判が評価が高かったので購入したが、評判に違わぬ一冊である。

初版2011/12 早川書房/ハヤカワ文庫NV

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