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2012.01.09

書評<ドイツ高射砲塔>

ナチス・ドイツ体制下で、首都ベルリンをはじめとした”戦略都市”を敵爆撃機から防衛するために建設されたのが高射砲塔である。一義的には高射砲の射界を確保し、より少ない高射砲で敵機を迎撃するのが目的であるが、大規模な建築物に格段の興味を寄せていたヒトラーが高射砲塔を”戦勝記念碑”として100年先も残る建築物とすることを意図したため、独特の迫力と壮麗さを持つ建築物となった。分厚いコンクリートで構築された高射砲塔は市民の防空壕としても機能し、数万の人々を救ったともいわれる。本書は有名な高射砲塔の建設経緯などを明らかにし、その戦役を辿っていく。また、高射砲塔の戦闘を辿るため、ドイツに対する都市空爆や、ドイツの高射砲のラインナップも概観している。

押井守監督作品「アヴァロン」において、クライマックスの戦場として登場した高射砲塔。二次大戦の知識に乏しい自分は、初見のときはすっかり架空の建築物だと思っていた。それぐらい、現実離れした建築物が高射砲塔であろう。兵器のカッコよさの基本は”機能美”だが、高射砲塔にはどこか中世の城郭を思わせる壮麗さを感じさせ、それがまさにヒトラーの意図であることが、本書を読むと分かる。高射砲塔だけではなく、ドイツ製火砲の高い技術力の結晶である高射砲について、開発経緯や配備が簡潔にまとめられていて、コンパクトだが資料性も高い。
二次大戦後、ドイツを占領した各国の軍が高射砲塔を爆破しようとしたが、例外なく苦労している。現代の戦闘機が使用するバンカー・バスターあたりが使用されたとしたら、高射砲塔は機能を失ったのだろうか?そんなことを妄想してしまうのであった。

初版2011/12 光人社/光人社NF文庫 

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Comments

初めまして。
高射砲塔のことを4年くらい前に知ってから気になっていましたが、ウィーンに行く機会が出来て本日から3日ほどウィーンに居ます。
明日は高射砲塔を見てきます。地元のひとで興味があるひとは少ないようです。日本から見に来た、というと不思議がられます。

>JI1Vさん
はじめまして。
いいですね。現地に見に行けるなんて。
地元の人にとっては当たり前にある戦跡風景の一つなんでしょうか。感じ方は違うかもしれませんね。

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