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書評<スエズ運河を消せ―トリックで戦った男たち>

ジャスパー・マスケリンはロンドンで人気を博すマジシャンである。第2次開戦初頭、国家への奉仕を決意したとき彼はすでに39歳であり、兵役適合年齢はとうに過ぎていた。だが、ジャスパーを見込んだイギリス軍は、彼をカモフラージュ部隊に所属させ、同じく変わった経歴を持つ男たちとともに、北アフリカ戦線に投入する。彼らはそれぞれが持つ技術を生かし数々の”マジック”を出現させる。砂漠の機甲部隊の位置を誤認させ、夜間に幻のアレキサンドリア港を出現させるなど、ロンメル将軍率いる”砂漠の狐”たちを惑わせるのだ。これはジャスパーを中心にした、カモフラージュ部隊の記録である。

マジシャンがカモフラージュ部隊に所属され、ロンメル将軍と直接戦火を交わさず戦う・・・ほとんどエンターテイメントの世界であるが、実際に戦場であった物語である。そこにはマジシャンだけでなく、気難しいが色彩に抜群の知識を持つ画家、手先の器用な大工など配属され、人間の錯覚を巧みに利用するマジックの知識を生かして巧みに幻の港や戦車部隊を出現させるのである。なんとも痛快なエピソードの連続であるとともに、戦場でのカモフラージュがいかに重要かも分かる。空中からの偵察は軍用機の根本的な任務の1つだが、それを欺瞞することによって、戦場における主導権を左右することもあるのだ。

ただし、Amazonのレビューを見ると、ジャスパーの物語には創作がかなり含まれている部分もあるようだ。確かに、確かに信頼していた副官の死や部下の恋愛など、いかにもハリウッド映画的な部分もあるが、それを差し置いても上質で痛快な、戦場の物語には違いない。

初版2011/10 柏書房/ハードカバー

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