書評<魚は痛みを感じるか?>
我々人類はいつからか農耕と家畜で食料を調達することを学び、狩猟動物ではなくなった。だが、数少ない狩猟の対象が魚類だ。もちろん養殖も盛んになりつつあるが、様々な形態の漁業とフィッシングがまだ人類の魚類調達手段の主体である。自然保護と動物福祉が叫ばれる昨今、それに真っ向から対立する狩猟の対象である魚類は、果たして痛みを感じるのか?痛みを感じるのなら、我々は魚の取り扱いをどのように変えなければならないのか?本書は「痛み」を科学的に解析し、魚類に対する”福祉”を提案する。
釣りをしたことがある人なら、引っ掛けた魚はバタバタと暴れるし、掴むと嫌がるしで、当然痛みを感じているもんだと思っているのではないだろうか?ところが身体の損傷や呼吸困難に対する反応と、いわゆる感情・情動としての「痛み」は別なのだそうだ。本書の著者はその「痛み」を魚が感じてるかを実験で確認する研究を手がけ、「痛み」を感じると結論づける。思いのほか魚の神経系統は発達していて、知能も想像するより高いのだ。そこから、著者は我々の魚類の扱い方の再考を促す。それは何も極端な自然保護を訴えているのではなく、魚を大切に扱うことで、結果的に資源としての魚類を守ることが出来、また養殖もうまくいくこととなる。
完全にタイトルだけで衝動買いしたが、魚類の繊細さをあらためて考えさせられる一冊であった。
初版2012/02 紀伊国屋書店/ハードカバー
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