書評<雪男は向こうからやって来た>
早稲田大学探検部出身で朝日新聞記者であった著者は、縁あってヒマラヤの雪男(イエティ)探索隊に誘われる。イエティの存在に懐疑的だった著者は、ヒマラヤでそれを目撃した日本の登山家たちを訪ね歩き、思いのほかはっきりとした目撃体験に出くわし、探索隊に加わることを決意する。果たして、イエティの存在を確証させる映像を記録することが出来るのか?本書は2008年のイエティ捜索隊を追ったノンフィクションである。
個人的にUMA(未確認生物)の類が大好きで、ヒマラヤのイエティがチベットの民間伝承の一つで、日本でいえば河童や天狗のようなものだということも知っている。だが、著者の取材により、高名な日本人登山家に何人もの目撃者がおり、そのどれもが思いのほか真実味があることが明らかになってくると、結論は分かっていてもワクワクしてくる、そんなノンフィクションだ。ヒマラヤでイエティを目撃したことにより、人生が変わり、命を落とした先人たちの存在が、懐疑的な著者=読者の心を揺り動かす。ややもすれば退屈な時間の積み重ねになりがちなイエティ発見のための監視の間に、過去から現在へのつながりをうまく挟み込むことによって一種の日本のイエティ探索の歴史書にもなっている。UMA好きには必読の書だ。
初版2011/08 集英社/ハードカバー
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