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2012.02.19

書評<争うは本意ならねど  ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール>

2007年、川崎フロンターレ所属の我那覇和樹はスポーツ紙の報道からドーピングを疑われ、6試合の出場停止処分を受けてしまう。しかしながらその”にんにく注射”は事実ではなく、また実際にチームドクターによって行われた医療行為は国際的なドーピング・ルールに照らし合わせれば、なんら違法なものではなかった。Jクラブのチームドクターの抗議もかなわず、我那覇の裁定は覆らない。そこで我那覇は意を決し、CAS(国際スポーツ審査機構)への提訴を決意する。当事者への取材や会議議事録を丹念に拾いながら、最終的に冤罪を晴らした我那覇と彼を支える人々、チームドクターたちのノンフィクション。

日本のサッカー界と、それを統括する日本サッカー協会をそれなりに長い間見ていると、他のスポーツの統括組織に比べればいくぶんマシながら、それでも欠点を抱えていることに気づく。それは協会組織の硬直化と学閥だ。協会の権威を守るため、出身大学の派閥の人間を守るため、間違っていることを訂正できない。我那覇の冤罪は、そのために起こったことだ。幹部の拙速な判断を、現場のミスにしウヤムヤにしていく。
日本のサッカー界にとって幸運だったのは、それに抵抗する人たちがいたことだ。他チームのドクターたち、他ならぬ我那覇と、それを支える人たち。昨年の震災の際にも感じたことだが、新しい世代の日本のサッカー・ファミリーのサッカーとプレイヤーへの献身的な愛には感心しきりである。
いかにも日本的な組織の特徴を引きずるサッカー協会と、Jリーグ開幕以降にサッカーに関わった人たちの世代間抗争。現在の日本社会の縮図のようにも感じる、本書の読後感であった。

初版2011/12 集英社インターナショナル/ハードカバー

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