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書評<南極点のピアピア動画>

日本の次期月探査計画に関わっていた大学院生・蓮見省一は落ち込んでいた。月へ衝突した彗星が撒き散らしたデブリが計画を潰し、その直後に恋人も去った。失意の蓮見のために、ユーザー生成動画サイト<ピアピア動画>に関わる技術者たちが、蓮見を宇宙に送り出すプロジェクトを立ち上げる。そして蓮見はボーカロイドに恋人へのメッセージをこめて、ピアピア動画にアップする。果たして、プロジェクトは成功するのか?
本書は動画サイトとボーカロイドが人と人をつなぎ、技術を紡ぎ出し、果ては未知との遭遇を促す短編SF集である。

ニコニコ動画と初音ミクが描き出す、少しだけSFで、心温まるエピソードを収めた短編集。はじめの2編を読んだ時点ではこんな印象だったが、ボーカロイドソフトでクジラと交流するプロジェクトあたりから、にわかに物語が本格SFに加速していく、最初の印象を見事に覆してくれる作品である。主要な登場人物ほぼすべてが”こちら側の人たち”であり、ネットが”才能の無駄遣い”を結びつけ、楽観的な未来を描く物語は、ネットへの依存度が高ければ高いほどリアルに感じられるだろう。宇宙関連SFを書く知識を持ち、本格的な潜水艦戦SLGをこなし、なおかつボーカロイドのPである著者でしか書けない、心温まる”少しだけ未来”の物語である。

初版2012/02 早川書房/ハヤカワ文庫JA

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