ロシア新戦略――ユーラシアの大変動を読み解く
1991年にロシアが崩壊して以後、ロシアや旧ソ連諸国、勢力圏であった東欧諸国は激動の20年をおくってきた。国家体制は変わり、新しい”独立国”が次々と生まれると共に、西欧諸国やアジアとの関係も20年の間に常に動き続けている。ロシアはこうした状況の中で、これからどこに行こうとしているのか。本書は、欧米にも深いパイプを持つロシア・中央アジア研究の第一人者が、経済、国際関係、文化と言った分野に分けて、ソ連崩壊後のロシアの20年を分析し、ロシアの行く先を見据える。
著者はまず、ソ連をツァーリの時代から連綿と続く「ロシア帝国」であると位置づける。そして、ソ連崩壊後の20年は”帝国の瓦解”の時代であったと分析する。経済的な要請ではあったが、自らの手で旧ソ連の国々を手放し、”植民地”を小さくしていったのは事実である。そうした状況の中で、ロシアは初期には西欧に歩みより、プーチンが秩序を取り戻して以後は独自の多国間連携を模索してきた。本書のそうした”ポスト帝国”の解析は非常に的確であり、いまだ西欧とは違う緊張感を持って接しざるをえないロシアという国の現状を詳しく知ることができる。エネルギー供給や核兵器といったジョーカーは握り締めているものの、軍事大国アメリカのような振る舞いはもはやロシアはできないのだ。
本書はロシアとその周辺の全体状況を様々な角度から知ることが出来る、貴重な一冊である。
初版2012/03 作品社/ハードカバー
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