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書評<華竜の宮>

ホットプルームによる海底隆起による海面上昇により、人類は未曾有の危機に陥った。環境の激変とそれに伴う混乱により人口は半減する。だが、海洋で生活すべく遺伝子レベルで改変された<海上民>と呼ばれる人間を生み出すなど、テクノロジーによって人類は生き延び、一定レベルの安定を手に入れていた。国家体制もいくぶん変化したものの、それを維持している社会。
世界は混乱時に比べれば安定しているものの、国家間あるいは民族間のトラブルは絶えない。日本政府の海洋公館公使・青澄誠司は、いわばトラブルシューターとして様々な思惑が渦巻く外交の現場を飛び回っていた。もっかの課題は、アジア海域での政府と海上民との対立。その解決の行く末がみえたのもつかの間、地球はさらなる試練を人類に課そうとしていた。

最新の地球科学理論を用いた舞台設定と、独創的な”遺伝子改変された人類”という登場人物が織り成す、長編SF。物語自体は外交官のネゴシエーションという、あまりSFには類のないものだが、壮大なオリジナル設定を生かしきったダイナミックな展開により、一気に読ませる。
印象に残るのは2点。1点目は物語の中心が外交であるために、そこに登場するのは官僚であり政治家なのだが、それぞれがその立場での正義感を持ち、行動していること。いわば”正論”のぶつかり合いが、物語に緊張感を生み出している。2点目は何をもって人類を定義するのか?という点。本書は遺伝子改変による亜人類とも呼ぶべき人々が登場するが、物語終盤で、さらなる遺伝子改変を行おうとする。あいつぐ地球環境の激変に、本来なら滅びるべき人類を生かすために、どこまで遺伝子テクノロジーを使うのか?もはや猿の姿すらしていない人類を、人類として定義すべきなのか?そもそも、現実に本書にあるような人類存亡の危機が訪れたとして、人類はそこまでして”生き続けよう”とするのか?
本書はテクノロジーと歴史に詳しい人ほど、哲学的な疑問を投げかける。壮大と呼ぶに相応しいSFだ。

初版2010/10 早川書房/ハヤカワSFシリーズ Jコレクション

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