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書評<人種とスポーツ>

オリンピック陸上短距離競技のファイナリストがほぼ黒人である事実を思い出せば、黒人のアスリートが特別な身体能力を持っているという”イメージ”を抱くのもむべなるかな、と思う。だが、それは果たして真実なのか。本書はアメリカでのスポーツ界への黒人の進出と活躍を追い、黒人が高い身体能力を持つという”ステレオタイプ”が真実なのかを解説する。

本書は主として、歴史や社会学の観点から「人種とスポーツ」の関係を明かしていくものである。従って、筋肉や神経組織の違いといったような指摘はまったくない。
本書はまず、そもそもスポーツを楽しむ余暇などなかった奴隷である黒人が、人種差別を乗り越えてスポーツ界で活躍することによって、「何においても黒人は白人に劣る」という偏見を「黒人は身体的能力が高い」という逆の偏見にかえていく歴史を追う。そこで見えてくるのは、あくまでその偏見を乗り越えたのは”個人”ということである。比較的恵まれた家庭環境と、本人の強いメンタルが、彼・彼女へ栄光をもたらすのである。
人種と各競技の歴史的関わりも重要である。黒人選手が多数を占める競技に偏りがあるのは、黒人に”機会の平等”があったわけではないことを示唆している。カリブの島々のプランテーションを支えるべくサブサハラから連れてこられた人たちの子孫が住む島国、という共通点を持つジャマイカとドミニカが、まったく違う競技が強いのはなぜなのか?本書の指摘は興味深い。
というように、本書の指摘する「人種ではなく個人」というのは政治的には正しいんだと思う。ただねえ、単純に”走る”という競技において日本人が永遠に黒人に勝てそうにないのも、また事実だと思うのよ。個人的には、いわゆる先天性の問題も、きちんと向き合う必要があると感じる一冊だった。

初版2012/05 中央公論新社/中公新書

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