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2012.07.23

書評<世にも奇妙な人体実験の歴史>

世に科学というものが浸透し始めた19世紀当初、まだ医者を名乗る者の知識は浅はかで、手術を施しても、かえって患者の寿命を縮める事態が横行していた。だが、改革の精神と旺盛な好奇心をもった新しい世代の科学者や医者は、自らが観察した結果をもとに、新しい医療に挑戦し始める。それはたいてい、自らを実験台にするものだった。本書は医療分野を中心に、現代につながる科学的見地を発見した科学者・医者の”自己実験”を紹介していく。

現在、我々が”常識”としている医療は、ほんの100年ちょっと前に確立されたものであり、そこには科学者たちの”無謀な挑戦”があった。人命というものが現在より軽かったその昔、死刑囚などに「治験」を実施する場合もあるが、多くの場合は本人の体を危険に晒した。自分の持つ仮説を証明するために、死をいとわない自己実験に挑む姿はまさに”マッド・サイエンティスト”そのままである。本書では当時の目で見ても危険で、汚い実験の数々が紹介され、そのことがいかに現代科学と医療に貢献しているかが分かる。本書の特徴は、たんに情報の羅列にとどまらず、著者のイギリス人ならではの皮肉な目線で書かれていることであり、おかげでますます科学者たちの”マッドさ”が強調される。科学の歴史の一面を垣間見ながらも、読み物として楽しい1冊である。

初版2012/07 文藝春秋/ハードカバー

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