書評<All You Need Is Kill>
詳細不明の異星の生命体に侵略されつつある地球。ジャケットと呼ばれる筋力増強・装甲ギアを装備した歩兵が、敗色が濃くなりつつある世界をかろうじて守っていた。初年兵、キリヤ・ケイジは激戦区であるコトイワシなる戦場に送り込まれ、激戦のすえ戦死する。だがケイジが再び目を覚ましたとき、時間は1日前に戻っていた。激戦の記憶とともに。そして、それは何度も繰り返された。不可思議なタイム・ループを繰り返すうちに、ケイジは一人の異能の戦士と出会う。
以下、ネタバレありで感想を。
帰省の移動時間用に何の気なしに読んだのだが、作品に引き込まれ、一気に読んだ。主人公が時間が繰り返していることを理解し、戦い続けることを決意する過程、あるいは時間が繰り返される中で徐々に明かされる異星の生命体の正体など、作品の中の謎がタイムループを繰り返すうちに徐々に明かされるプロットと文章は、非常に秀逸だ。タイムループの中の”ボーイ・ミーツ・ガール”が主題だとは思うが、世界観そのものも他の作品で使いまわしていいくらいだと思う。
本作にこめられた意味はあとがきに書かれているが、著者がゲームをテーマに他の作品を書いていることからも明らかだ。読者それぞれにまったくのムダと捉えられかねない行動の繰り返しと、費やした時間の持つ意味を問うているのであろう。そこに何を見出すか?ラノベレーベルの作品だが、存外に深いSFである。
初版2004/12 集英社/集英社スーパーダッシュ文庫
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