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書評<松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン>

2012年にJ2に昇格し、厳しい戦いを続けるサッカークラブ、松本山雅。このチームはJFLの時代からカテゴリーを越えた観客動員数と、スタジアムの異常ともいえる盛り上がりで一部事情通にはよく知られたクラブであった。それが一気に全国区になったのは、2011年、横浜Fマリノスを戦力外となった元日本代表の松田直樹が移籍することになってからである。著者は1年間に渡ってクラブに密着し、J2昇格までの道のりを追う。そして、思わぬ悲劇に出くわすことになる。

地方の一都市なのにサッカー専用スタジアムがあること、県庁所在地である長野市のクラブ、AC長野パルセイロとの”対立”など、興味を引かれるトピックも多数ある松本山雅。Jリーグ全体がやや盛り上がりに欠け、Jクラブの財政危機が叫ばれる中、松本山雅の存在は異質である。本書はなぜ松本の人々がスタジアムに足を運ぶかを実直に取材したものであり、また全国に点在するJFLチームを旅するノンフィクションである。松本山雅とは何かを知るとともに、実質的に日本のサッカーピラミッドの3部にあたるJFLというリーグがどんなものかを垣間見ることができる。
中途に松田直樹の逝去というアクシデントがあり、本書の構成は企画当初と大きく変わっているのであろう。しかし、松田直樹の物語にならず、あくまでクラブを主役に据えているところに、著者の意図がみえる。Jリーグ全体の地盤沈下に危機感を覚えるJクラブのサポーターも多い中、Jリーグ設立当初の理念は確実に、地方各都市に息づいている。まだまだヨーロッパ諸国に追いつけないにしても、日本流のクラブ文化が育ちつつあるのだ。願わくば、その芽が狩れることなく、ゆっくりでもいいので育っていけばと思う。裾野の広さこそが、スポーツとそれにまつわる文化を支えているのである。

初版2012/07 カンゼン/ソフトカバー

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書評<のりもの進化論>

2012年現在、日本の交通の主役が自動車であることに異論がある人は少ないだろう。しかし、エネルギー資源や地球温暖化の観点から、人間の移動手段の再考がせまられている。自転車がかつてないほど見直され、それに類似するモビリティが次々と提案されているし、公共交通機関としては路面電車の復活が見られるのもそうした動きの一環だろう。本書はそうした状況において新たなモビリティを実際に試し、その有用性を検証する。

最初に感じるのは、本書は都市、もっといえば東京を基本とした都市内モビリティを検証したものであるということだ。自転車というのりものの検証をきっかけに、リカベントなど様々なモビリティが提案されているが、あくまで天候・道路状態といった外部条件が四季をとおしてある程度一定であり、移動範囲もそれなりであることが前提だ。それがあてはまる都市は、実はなかなかないのではないかと、地方在住者は思う。自転車やそれに類する人力のモビリティが見直されるのはいいことだと思うが、高齢化していく社会でそれがどこまで現実的かは、よく考える必要がある。それに、衝突事故のことを考えるのも重要だ。
むしろ本書でうなづけるのは、世界の中で日本の”ママチャリ”という存在の異質さと、警察の場当たり的な行政の限界である。極端な話、ほぼ”使い捨て”の一万円自転車の存在が交通行政のネックになっているともいえるのである。
首都圏在住者でないと、なかなか実感をもって読むことができない本書ではあるが、都市設計と交通手段というものを考えるきっかけとなることは間違いない。

初版2012/08 太田出版/ソフトカバー

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SEA HARRIER FRS.1 Day2nd

今日は富士総合火力演習の一般公開日。10式戦車が2両同時にスラロームしながらの行進間射撃とか、関係者をうならせる機動を披露したらしい。Twitterには「世界よ、これが第4世代戦車だ!」の声が溢れてた。
そんなことを横目に見ながら、シーハリアーはサンディングと本体塗装。

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最近はスジ彫り復活時のことを考えて、スキマはほぼ瞬着と凝固促進剤で埋めているのですが、デメリットは固くてサンディングに時間をとられること。ともかく、ガリガリと削って形を整えて、サーフェサーを吹いて本塗装。
本体はフォークランド紛争当時の塗装のうち、エクストラダークシーグレー一色のものをチョイス。クレオスの特色C333にC332ライトエアクラフトグレーを少量添加してやや明るめにしたはずなのですが、いざ吹いてみると狙いよりやや暗め。イギリス空海軍のグレーは難しい。まして戦時の応急塗装だしなあ。
太めのスジ彫りも、塗ってみればあんまり気にならない。なかなかのキットです。

ほんとはウィークエンドでなんとか脚までつけたかったけど、サンディングに意外に時間をとられたので今日はここまで。1週延びたので、もうちと手を入れますかね。

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SEA HARRIER FRS.1 Day1st

もう9月の声を聞こうかというのになんとも厳しい残暑。寝不足だわ、なぜか下痢だわで心身ともあまり調子がよくないが、マイペースを取り戻すためにも汗をかきかきプラモ作ります。お題はコレ。
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新生エアフィックスが精力的に発売を続ける1/72の新金型商品から、BAeシーハリアーFRS.1。あのフォークランド紛争から30周年。今年中にかたづけておくべきお題ですね。お手軽にウィークエンドで完成させる方向で製作。

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最近のエアフィックスは低価格の新金型商品(おそらくは中華金型)を矢継ぎ早に発売しています。低価格だけあってオールスジ彫りではあるものの、スジは深く広く、細かいパーツもそれなりの出来。しかしながら補助エアインティークは上半分が開く駐機状態と全閉を選択することができ、またエアインティークの内部表現もこだわってて、ジョンブルのこだわりをみることができます。総じて”決定版”とはいえないものの、コレクション的に並べるには充分でしょう。

胴体の組み立てまではごく順調に。ただし、コクピットの仮組みが足りないと、機首部分とコクピット背後にややスキマができます。写真はべったり瞬着で埋めていますが、これはオレがヘタクソなせいでしょう。
今日、一番苦しんだのはハンブローブ基準のカラーナンバー指定かも。近い色ぐらい記入してくれればいいんだけど、まったくそれもないのでよく分からないのね。ネットで見つけた対照表で対処しました。そのURLを貼っておきます。
http://homepage3.nifty.com/triangleplace/color.htm
さて、明日でサンディングして塗装まで行けるかな?

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書評<気象を操作したいと願った人間の歴史>

気象は人類にもっとも影響を与える事象であり、いつの時代でも人類は気象に振り回されてきた。それゆえ、農業を営み、原初の文明を発展させ始める頃から現在に至るまで、人類は気象を操作したいと願ってきた。その手段が呪術や神事から科学技術にとって代わろうと、その根本にある考えは基本的に変わらない。本書は古代から現代に至るまで、気象を操作したいと願い、失敗してきた歴史を辿る。

地球温暖化が叫ばれる昨今、地球規模で気象をコントロールしようというアイデアがいくつも提案されている。このような”気象が操作できる”と謳った人間は、過去に限りないほどいるが、いずれも失敗した。特に19世紀以降、科学技術が発達し、もっともらしい理論をぶち上げ、気象操作を金儲けや国家の防衛・攻撃手段に使うことができるとする科学者が幾人も現れ、歴史の仇花となっていった。今となっては詐欺師同然と思われる輩も多いが、科学者が気象を操作できると確信したのは事実であろう。疑似科学と科学の違いを明確にした著名な人物すら、その罠に引っかかった。それほどに、気象操作は研究対象として魅力的なのであろう。
本書はこうした”失敗の歴史”を積み重ねることによって、現在の”地球工学エンジニア”たちに警鐘を鳴らす。現代のスーパーコンピュータがどんなに発展しようと、気象というのは予測がつかない。今まさに我々自身が体験していることである。科学の発展に限界はないとは自分も思うが、うぬぼれと自信はキチンと区別しなければならない。
本書は歴史書であり、同じような事例を延々と並べている箇所もあるため、決して読みやすい本とはいえない。しかし、科学の限界と傲慢を学には最適の書といえる。

初版2012/06 紀伊國屋書店/ハードカバー

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書評<All You Need Is Kill>

詳細不明の異星の生命体に侵略されつつある地球。ジャケットと呼ばれる筋力増強・装甲ギアを装備した歩兵が、敗色が濃くなりつつある世界をかろうじて守っていた。初年兵、キリヤ・ケイジは激戦区であるコトイワシなる戦場に送り込まれ、激戦のすえ戦死する。だがケイジが再び目を覚ましたとき、時間は1日前に戻っていた。激戦の記憶とともに。そして、それは何度も繰り返された。不可思議なタイム・ループを繰り返すうちに、ケイジは一人の異能の戦士と出会う。


以下、ネタバレありで感想を。
帰省の移動時間用に何の気なしに読んだのだが、作品に引き込まれ、一気に読んだ。主人公が時間が繰り返していることを理解し、戦い続けることを決意する過程、あるいは時間が繰り返される中で徐々に明かされる異星の生命体の正体など、作品の中の謎がタイムループを繰り返すうちに徐々に明かされるプロットと文章は、非常に秀逸だ。タイムループの中の”ボーイ・ミーツ・ガール”が主題だとは思うが、世界観そのものも他の作品で使いまわしていいくらいだと思う。
本作にこめられた意味はあとがきに書かれているが、著者がゲームをテーマに他の作品を書いていることからも明らかだ。読者それぞれにまったくのムダと捉えられかねない行動の繰り返しと、費やした時間の持つ意味を問うているのであろう。そこに何を見出すか?ラノベレーベルの作品だが、存外に深いSFである。

初版2004/12 集英社/集英社スーパーダッシュ文庫

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書評<探検家、36歳の憂鬱>

チベット・ツアンポーやヒマラヤの探検を描き、大宅賞を受賞した探検家、角幡 唯介氏の短編集。著者が体験した雪崩に関する生々しいエピソードや、探検家受難の時代に自らは「探検」や「冒険」に対してどのように向き合っているかを赤裸々に告白したエピソードなど、興味深いエッセイが収められている。

「雪男は向こうからやって来た」を読んで以来、魅力的な文章を書く方だと思っていたのだが、それはエッセイにしても変わらない。虚勢を張らず、自分の行動原理や感情を表現していくその姿勢に好感が持てる。探検とそれをテーマにしてノンフィクションを書くという、いわば表裏一体の行為が、現代においては成り立たないという著者の考え方が、著者の文章において「極地探検という一般人には無縁の行為」と、「一般人の日常」との距離を絶妙にし、成り立たないはずのノンフィクションをより面白いものにしているのだと思う。次の長編が楽しみだ。

初版2012/07 文藝春秋/ソフトカバー

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書評<空飛ぶ広報室>

業務とはまったく関係ない事故でパイロット資格を失った空自パイロット・空井大祐は、防衛省本省の広報室に配属される。常に”一般人”と触れることとなる新たな部署で、個性的な面々と新たな仕事と向き合うことになる。マスコミでさえ”軍隊”に対する知識が極端に薄い(それどころか反感さえ持つ)日本で、自衛隊の広報とはどんな仕事で、どんな苦労を背負うことになるのか。お堅い女性テレビディレクターとの不器用な交流を中心に、物語は進んでいく。

著者のライフワークである自衛隊を扱ったフィクションの最新作。パイロット資格を失い、まったく畑違いの部署に配属された主人公の心の回復と成長をとおして、自衛隊広報の仕事がどんなものかを知ることができる。マスコミや芸能界との関わりをとおして、いかに自衛隊の存在と役割をアピールできるか?国防というものの理解が低い日本で、それに取り組む人たちの前向きの姿勢が心を打つ。
企画の売り込み、自分の組織内の部署の調整、そして現場での仕事と、仕事の内容と手順自体は多くの会社での仕事と変わらない。自衛隊の組織の中でそんな当たり前の手順が踏まれていること自体が、逆に新鮮だったりする。マスコミが”軍隊”に偏見を抱いているように、自衛隊内部にも”たかがテレビ”と考える人がいるのだ。そこで能動的に仕事をしようとすれば、ときに部署間で衝突も生まれる。そこをいかに調整していくか?個性的な登場人物たちがそれぞれに解決しようとしていくので、読んでいても飽きない。
Amazonのレビューを見ると、本書を「自衛隊のプロパガンダ」とする評価があった。ちょっとだけ甘い恋愛要素も盛り込んだフツーのお仕事の小説が、プロパガンダ認定されるとは、自衛隊広報の仕事はまだまだ終わらない。

初版2011/07 幻冬舎/ハードカバー

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