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2012.08.28

書評<松本山雅劇場 松田直樹がいたシーズン>

2012年にJ2に昇格し、厳しい戦いを続けるサッカークラブ、松本山雅。このチームはJFLの時代からカテゴリーを越えた観客動員数と、スタジアムの異常ともいえる盛り上がりで一部事情通にはよく知られたクラブであった。それが一気に全国区になったのは、2011年、横浜Fマリノスを戦力外となった元日本代表の松田直樹が移籍することになってからである。著者は1年間に渡ってクラブに密着し、J2昇格までの道のりを追う。そして、思わぬ悲劇に出くわすことになる。

地方の一都市なのにサッカー専用スタジアムがあること、県庁所在地である長野市のクラブ、AC長野パルセイロとの”対立”など、興味を引かれるトピックも多数ある松本山雅。Jリーグ全体がやや盛り上がりに欠け、Jクラブの財政危機が叫ばれる中、松本山雅の存在は異質である。本書はなぜ松本の人々がスタジアムに足を運ぶかを実直に取材したものであり、また全国に点在するJFLチームを旅するノンフィクションである。松本山雅とは何かを知るとともに、実質的に日本のサッカーピラミッドの3部にあたるJFLというリーグがどんなものかを垣間見ることができる。
中途に松田直樹の逝去というアクシデントがあり、本書の構成は企画当初と大きく変わっているのであろう。しかし、松田直樹の物語にならず、あくまでクラブを主役に据えているところに、著者の意図がみえる。Jリーグ全体の地盤沈下に危機感を覚えるJクラブのサポーターも多い中、Jリーグ設立当初の理念は確実に、地方各都市に息づいている。まだまだヨーロッパ諸国に追いつけないにしても、日本流のクラブ文化が育ちつつあるのだ。願わくば、その芽が狩れることなく、ゆっくりでもいいので育っていけばと思う。裾野の広さこそが、スポーツとそれにまつわる文化を支えているのである。

初版2012/07 カンゼン/ソフトカバー

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