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書評<人体冷凍 不死販売財団の恐怖>

ロサンゼルスの救急救命士、ラリーはハードなその仕事を愛していたが、その一方で消耗し、転職を考えていた。そこに1つの求人情報が目にとまる。死亡した人間を冷凍し、治療方法が進んだ未来へ病気の治療と復活を託す、アルコー延命財団なる団体である。怪しさを感じつつも、パンフレットに記される最新テクノロジー研究に魅かれ、ラリーは転職を決意する。だが新しい職場は、狂信的なマッドサイエンティストたちが、テクノロジーのかけらもない人体冷凍なる儀式を施す異常なところだった。ほぼカルト教団と同義のクライオニクスの実態をラリーは告発する。

人体冷凍という、ある種の延命行為がアメリカで行われているについて多少の知識があったが、まさかここまでカルトな集団だったとは、というのが率直な感想である。冷凍という行為は遺体をとてつもなく痛めつけ、まして脳は完全に破壊される。まして冷凍に前後した遺体の扱いも、常識的な人間ならそこに尊厳など感じることはできない。「未来のテクノロジーに第2の”ライフ”を託す」なんてのは、確かに宗教に似た信心がないととても出来ることではない。だからこそ、アルコーに関わる人間はカルト宗教の団体に非常に似ている。自ら孤立しながらも内部では対立し、そこに秩序はない。そして団体を抜けようとする人間(本書では主人公ラリー)を執拗に追跡する。ましてラリーは内部告発に及んだのだ。
一方で、内部告発なる行為の危うさとある種の興奮も感じることができるのも本書の特徴だ。ラリー自身が自分をスリルを求める人間だと認め、アルコーを調査する行為に異常な情熱を燃やす。救命士という前歴、憧れのスターが尊厳もなく冷凍されるという事実が彼をそうさせているのであろうが、彼の執念も大したものである。
ノンフィクションでありながら、ホラーとサスペンスを感じさせる告発書である。

初版2010/11 講談社/ハードカバー

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