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書評<屍者の帝国>

19世紀のグレートブリテン。死体にネクロウェアなるソフトをインストールし、”屍者”として物言わぬ労働力や兵士として活用するテクノロジーが発達した世界。医学生であったジョン・ワトソンは諜報機関にスカウトされ、戦火が拡がるアフガニスタンに派遣される。アフガニスタン山地の奥地に存在するとウワサされる、”屍者の帝国”を探索するために。そしてワトソンは、屍者の謎を求めて、世界を巡ることとなる。
享年34の若さでなくなったSF作家、伊藤計劃の未完の絶筆を、こちらも当代随一のSF作家である円城塔が引き継いで完成させた作品。伊藤計劃が書いたのはプロローグのみで、後のストーリーは円城塔が組み立てた作品である。

自分も伊藤計劃の才能に驚き、その早過ぎる死を悼んだファンの一人だが、円城塔が絶筆を引き継いだと知ったとき、少々心配だった一人でもある。伊藤計劃の作品は好きだったが、円城塔の作品は1冊読んだだけで、いまいち好みに合わなかったからである。しかしそれも杞憂に終わったようだ。人間の意識、魂とは何か?人間という動物は進化の位置づけ上、どこにいるのか?伊藤計劃が作品で問うたテーマはちゃんと引き継がれている。屍者なるものを中心に、現代の我々とは似ているようで異形のテクノロジーもまた、本作を引き立てている。もちろん、伊藤計劃が書けばもっと違った作品になったのは間違いないが、それでも在りし日の彼を感じることはできるだろう。

初版2012/08 河出書房新社/ハードカバー

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