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2013.02.05

書評<ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」>

韓国と中共をネットで攻撃することから始まり、ついにはフジテレビ抗議デモや、花王の不買キャンペーンなど、リアルでも存在感を持ち始めたネット右翼、通称”ネトウヨ”。本書はネット右翼の受け皿となっている”在特会”を中心に実際に取材した安田浩一氏、ネットの世界の実際に詳しい山本一郎氏、ネット右翼の攻撃対象である広告代理店出身の中川淳一郎氏の共著であり、ネット右翼の実際と、その影響力や行く末について論じている。

「ネットの情報に触れることにより、真実に目覚める」というのは、自分自身も経験があることだ。大手マスコミが報じないことに触れ、隣国の実態を知るにつけ、それらに対して攻撃的になってしまう。だが、ある程度のところまでいくと、逆にネットに溢れるデマを見分ける能力がついて「まあ、目くじら立てるほどのことでもない」というところに落ち着く。2ちゃんねるにおいて「半年ROMれ」とは、名言といっていいと思う。
ネットにはまる多くの人にとって”ネット体験の歴史”はそんなものだと思っていたのだが、どうやらそうではないようだ。初期に受けたショックをそのまま信じた勢力の一つがネット右翼であり、なまじ一部の政治家がそこに媚びるので、事態がややこしくなっている。本書では安田氏がネット右翼の抱える情報の矛盾点を突き、山本氏がユーザー調査などからネット右翼の実数を推測し、中川氏が大手マスコミの”真実”を明かすことにより、ネット右翼なるものが抱える実際を知ることができる。自分がネットをウロウロして持つ印象も、本書に書いてあることに近い。
ただ、ナショナリズムに陥っていくのを安易に貧困や失業に結びつけるのも違うと思う。韓国や中国がやってることがおかしいのもまた事実だ。それに反感持ってる人の裾野はより広いと思う。そこを見誤ると、山本氏が例示している海外のネット右翼のように、実力行使としての暴力に結びつく事態が訪れるかもしれない。ネットがどこに人を導くか、今後も推移を見守るしかあるまい。

初版2012/01  宝島社/宝島新書

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