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書評<世界を変えた火薬の歴史>

世界の戦争の様相を変え、破壊をもたらした火薬は、紀元800年前に中国で発明されたものであった。それが練丹術師たちが代々の皇帝の要求に応えて調合した”不老不死のクスリ”であったことは、歴史の大きな皮肉である。戦乱の続く中国で火薬とそれを使用した兵器が発達する一方で、イスラム世界やヨーロッパにそれが伝わったのは数百年も後のことであった。本書はこうした火薬の歴史を辿り、いかに大きな影響を与えたかを分析する歴史書である。

「火薬・活版印刷・羅針盤」が古代中国の三大発明であることは教科書に掲載されているが、実はそれが詳細に知られるようになったのは研究の進んだ最近のことである。本書はそうした研究成果を多く引用し、練丹術師の探求により始まった火薬の意外な開発史を知ることができる。それはまず、初期の手探りの化学であった。ほぼ偶然により発火する物質を混合することができたが、それを今でいう”火薬”として
安定供給するには、多くの試行錯誤と犠牲が必要であることが本書で示される。昨今のニュースで「爆薬は肥料から作られた」と簡単に伝えるが、火薬にするには多くの手間のノウハウが必要だ。そして初期の火薬を急速に進化させたのは中国が戦乱の地だったことが大きく関係している。兵器が発達するのは、いつだって戦争の圧力なのだ。その火薬がやがてヨーロッパに伝わり、産業革命を経て、火薬の開発史が西洋に移っていく歴史は、世界の中心がどこかを辿る旅でもある。
ジャレド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」が歴史を変えた要因と看破したが、銃を火薬に置き換えた方がより適切ではないかと感じさせる良質な歴史書だ。

初版2014/04 原書房/ハードカバー

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