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2013.07.22

書評<メディアの仕組み>

テレビで御馴染みの時事問題解説者、池田彰氏と主にネットを主戦場とするジャーナリスト、津田大介氏が対談形式でテレビ、新聞、インターネット各メディアの現在とその問題点を解説する。各メディアの相互の関わり、日本特有の事情にも触れられ、ときに”マスゴミ”と罵られるマスコミとどうつき合っていいかを検討する。

ニコニコ動画の対談などを書籍化したものなので、注釈など含めて平易にマスコミと情報の問題点が把握できる本書。自分としては、”メディアの仕組み”というよりは”主要メディアの限界”を指摘している書だと捉えた。”Facebook革命”などといわれた”アラブの春”は、きっかけはSNSだったにしろ、デモの大量動員を可能にしたのは独自の立場を維持するアルジャジーラのTV放送があったからであり、ネットの役目は実は小さかったこと。そのTVは予算の問題から専門家を抱えることができず、深く考えずに第一印象をセンセーショナルに報道してしまうこと。オールドメディアである新聞は、宅配という日本独自のシステムのおかげで、ネットやTVのバックアップの役目も果たせていないこと。結局のところ、「事件の第一報に脊髄反射してTweetしない」「複数情報源に当たる」「この世の基本は物理と化学」といった自分なりの基準を設置して、情報にあたるしかあるまい。

ところで本書はAmazonでは売ってません。興味がある方は下記アドレスへどうぞ。

https://yakan-hiko.com/shop/pc1

2013.07.21

F-2A/B Completed

ハセガワ1/72三菱F-2AおよびF-2B、完成しました。
三菱F-2Bは三菱F-1の後継として採用された空自の支援戦闘機。80年代の計画検討当初はエンジン以外は国産機となるはずだったのですが、ときは日米貿易摩擦まっさかり。結局、アメリカの圧力に負けてF-16をベースに空自の要求性能にかなうように開発されました。大型対艦ミサイルを4発搭載して、所定の航続距離を実現するために主翼を大型化、さらに主翼の一体カーボン成形、FCSは世界初の国産AESAレーダーと、特徴ある設計となっています。
まずは三菱F-2Bから紹介。
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キットはハセガワ1/72を最低限のディテールアップ。イジェクションシートはどうにも使えないので社外のレジンシートに換装、翼端の放電索を0.2mmの真ちゅう線で再現。キット自体は発売年代が古めなのでシャープさにややかけるものの、パテとサンディングは必要最低限です。
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塗装は2006年に登場した、松島AB所属の第4航空団第21飛行隊の創隊30周年記念機。仙台を象徴する武将、伊達政宗をモチーフにしたスペシャルマーキングです。空自のいわゆる洋上迷彩のブルーは光線の当たり具合によって色調が違ってみえる難しいカラーですが、今回はクレオスから新発売された特色セットを使用。2色のブルーの他に、レドームグレーがセットされています。ガイアのブラックサーフェサーを吹いて、スケールを考慮して少量のC338グレーを添加してランダムに吹きつけ。キットにセットされたデカールはやや糊が薄いので、マークセッターは必須です。
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搭載兵器はAIM-7F×4、AIM-3×4の完全空対空仕様。AIM-7Fはランチャーをかまさなければならないので、キット中の使わないAAM用パイロンから土台を切り飛ばして使用しています。Sta2/10のAAM用パイロンを取り付けるダボは開いてないので、この形態にするにはダボをドリルで開口する必要があります。
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ちなみに、ハセガワの説明書の指定色(C72ミディアムブルーとC14ネービーブルー)で塗った同じく洋上迷彩のF-4EJ改と比較。
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エアブラシの吹き方も変えているのでなんですが、印象としては、「直射日光が当たったときに空中で撮影したF-2B」と「曇りのときに地上で撮影したF-4EJ改」の違いというところでしょうか。ここらへんはもう、個人の好みですね。
お次はF-2A。
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こちらは三沢AB所属の第3航空団第3飛行隊所属機のスペシャルマーキング。2010年の戦技競技会時のマーキングです。F-2のスペマーのいろいろありますが、個人的にはこれがベスト。
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単座と複座のコンバーチブルなので、キット製作上の注意点は同じ。ただし、IEWS(統合電子戦システム)の完全版がF-2Aには搭載されているので、同時製作の際は垂直尾翼やエアインティーク近辺のセンサーのパーツ取り付け用の穴開けなどに注意です。
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今回の製作の反省点はキャノピーがやや曇りがちなこと。Ω型で中央にパーティングラインあるので1000→1200→1500→2000でサンディングした後、コンパウンドで磨くのですが、ちょっと磨きが足りないけど妥協しました。4000番のペーパーまで使ってサンディングするとキレイになるんだった、と思い出したのは完成後に用具入れからペーパーが見つかった後。なにかのついでにパーツ請求して、ここはやり直しましょう。
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完成して並べると、やっぱいいですね、洋上迷彩は。それと今回は放電索を再現したのですが、0.3mmのドリルで開口して0.2mmの真ちゅう線を差す作業に一苦労。ハセガワのキットは放電索の位置がやや違うので修正したつもりでしたが、これまた違ってたりする。F-15とともに売れスジキットだと思うので、このへんの細かいとこ含めてキットリニューアルしてくれないかあ、と思ったりします。
さて、お次はF-4祭りしつつ、新キットレビューとしましょうか。

2013.07.15

書評<クモはなぜ糸をつくるのか? >

クモはどこにでもいて、餌の捕獲手段であるその網を見たことのない人はいないだろう。物珍しくないそのクモは、4億年の時間を生き抜いてきた”ツワモノ”で、クモがつむぎだすその網は、数種類のたんぱく質を組み合わせ、絶妙な強度と粘りを持つ驚異の素材でできている。そして、その網をつぶさに観察すると、クモがどのように進化をしてきたかが分かる。本書はクモとクモの網がどのように進化してきたかを紹介し、そのクモの進化がダーウィニズムの証明のかっこうの材料になることを解説している。

クモは見た目は不気味なものの、ほぼ益虫(というか益節足動物)なので見守っておく、くらいが自分のクモに対する認識だったのだが、本書はクモがいかに興味深い生物であるかを教えてくれる。様々な種類のクモが張る、様々な網の意味。そして、その網は数種類のたんぱく質を組み合わせた、いまだ人工のものが追いつけない強度と靭性を兼ね備えたものであり、その網の種類を研究することで、それがダーウィニズムとどのような関係を持つかを明らかにする。新鮮な知識を提供し、なおかち「さすがクモ、数度の大絶滅を生き残ってきただけのことはある」と感じさせてくれて一冊だ。

初版2013/06 丸善出版/ソフトカバー

2013.07.14

書評<チェルノブイリ・ダークツーリズム・ガイド 思想地図β vol.4-1>

1986年に発生した原子力発電所の爆発事故から、27年を経たチェルノブイリ原発。事故を起こした施設を覆う新たな石棺の建設も進み、除染もある程度進んだ現在、事故現場を”観光地化”しようとする動きが出てきており、現に複数のツアー企画が運営されている。
東日本大震災に起因する福島原発事故以後、比較されることが増えたチェルノブイリの現在を若手の思想家たちが実際に訪問し、ツアーに参加して現地の人々にインタビューすることにより、原子力事故のその後と、福島の取りうるべき将来の可能性を問う。


災害現場の跡地、戦争の爪痕がうかがえる戦跡、今は使われていない巨大廃墟など、いわば人類の負の遺産を見学する観光を”ダーク・ツーリズム”というそうだ。本書は福島第一原発をいわば”観光地化”するプロジェクトの前段階として、先行する事例たるチェルノブイリの現状をレポートしている。そのプロジェクトの是非はともかくとして、豊富な写真で実際のチェルノブイリの模様がレポートされ、またウクライナの現状と未来を現地の識者にインタビューしていく本書が貴重で、読み応えのある記事の連続であることは確かだ。
個人的には本書の編集に関わっている思想家やジャーナリストを巡る動きに必ずしも賛成ではない。というか、正直キライな人間も本書の編集に関わっている。だが、本書は観光ガイドであり、チェルノブイリの現状に関わるレポートなので、ほどほどにフラットな見地の文章がほとんどである。彼らへのそういった先入観があって本書の購入を躊躇している方にも、興味深く読めると思う。
ちなみに、自分は原発再稼動賛成派だが、本書を読んでもその意見は変わらない。

初版2013/07 ゲンロン/ソフトカバー

2013.07.13

F-2B Day6th

猛暑というか、不安定な天候の中、3連休の初日は部屋にこもって細かい作業。
スミ入れ、細部の筆塗り塗装、小物の接着を終えて、デカール貼り一歩手前まで。

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これからF-2を作るみんな!F-2のスタビライザーは下半角がついてて、左右同一パーツではない!気をつけるんだ!(塗装をやり直したウイングバックからのメッセージでした)

2013.07.07

F-2A/B Day5th

サンフランシスコ国際空港で、アシアナのB777が着陸失敗して大破。1日経たずの段階では原因の特定などしようもないが、B777って胴体がめちゃ長くて、すぐにシッポを摺りそうな感じはするよね。

そんなニュースを横目に見ながら、F-2A/Bは全体塗装の続き。
いつものごとく、説明書を拡大コピーしてマスキングシート代わりにして迷彩塗装。

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かなり厳重にマスキングしたつもりですが、まあ一発で決まるわけがなく、2本のエアブラシを交互に使いながら調節。はみ出しを修正していきます。その後、機首のIFFアンテナをマスキングしてレドームと同じカラーを吹きつけ。IFFアンテナ付近は1mmテープを短冊切りにするとちょうどいい感じです。

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その後、フラップと胴体の可動部分など細かいところをちょこちょことマスキングしながら、今日はここまで。

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今回は資料を参考に吹きムラをあえてそのままに仕上げてみようと思います。大きな敵は暑さと湿気だ(笑)。

2013.07.06

F-2A/B Day4thあたり

福岡に越して来てから最初の梅雨。豪雨が続く、というほどではないけど、こんなに梅雨らしい梅雨を味わうのは久しぶりかも。蒸し暑くて体力消耗気味。

静岡ホビーショーにお出かけしたり、その後の6月は仕事が多忙だったりして、ずいぶんとご無沙汰だったF-2A/Bは暇を見つけてちょこちょこといじってました。そんでもって、今日は機体の塗装。
今回はガイアのブラックサーフェサーを使って黒立ち上げ。ツヤ消し気味の仕上がりになるので、シャドー入れとコクピット周辺のフラットブラック塗装がいっぺんにできるので、非常に便利なことを最近発見したのだ。

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自分の場合は、レドームとジェットノズル基部を先に塗装してからマスキングして、本体塗装。湿度が高いので、乾燥には注意しながらの作業。

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今回の塗装はクレオスの自衛隊洋上塗装セットを使用。黒立ち上げなのと、スケール感を考慮して、明るめのグレーを1滴垂らしてエアブラシ塗装。ややマダラにしながら、単調にならないように吹きます。
ところで、こういう特色セットって早く減る色があるじゃないですか。今回だと、この薄い方のブルーが1/72でもすでに半分以上なくなってるわけですよ。濃いブルーを1回も吹いてないのに。よく使う色の方は2本セットするとか、高くてもちゃんと使い切れる方がいいと思うんだけどなあ~。

ほんとはマスキングして迷彩までいく予定だったけど、ここで集中力切れ。明日で本体塗装は完了させよう。

2013.07.03

書評<パンツァークラウン フェイセズI・Ⅱ>

西暦2045年、大震災で崩壊した東京は、行動履歴解析および助言付与による市民の行動制御技術〈Un Face〉と、現実への情報層(レイヤー)付与を組み合わせることにより、、完璧なセキュリティを実現した層現都市イーヘヴンに生まれ変わっていた。市民はそこで市民としての階層と、RollModelを与えられ、生活していた。そこへ漆黒の強化外骨格を身にまとう青年・広江乗が、民間保安企業の契約者として派遣される。「RollModel=Hero」としての彼が、東京を脅かすテロ集団と対峙する。

少し読んだだけで沖方丁のフォロワーと分かる文体。現在の技術レベルから予測できる限りの未来技術の制御を受け入れた市民たちが生活する”デストピア”。そこで闊歩する強化外骨格。そこそこに暗示されるアメリカの作家、P・エルロイの影。まあどこかで見てきたような物語であり、Amazonあたりのレビューの点が辛くなるのも分からなくはない。だが、例えば「マザーコンピューターが人々を制御」する物語は古来から多く存在するが、どのように人々を制御するか、具体的にここまで提示できたSFは意外に少ないと思う。本格SFは敷居が高いが、ライトノベル上がりの読者には心地よい読み応えを提供するのではないか、と思う。個人的には、著者の評価は次の作品までお預けとする。

初版2013/05/06/07 早川書房/ハヤカワ文庫JA

2013.07.02

書評<MM9-destruction->

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“気象庁特異生物対策部”略して“気特対”と、一騎と亜紀子、そして伝承の中の”神”であるヒメの活躍で、スカイツリーを襲った宇宙怪獣を辛くも撃破してから二日。一騎と亜紀子、そしてヒメは茨城県内のとある神社に護送された。そこでた美少女巫女ひかると出会う。ヒメとひかるの意外な関係とは。一方、日本近辺では大型怪獣が次々と出現。その裏には、地球侵略を企むチルゾギーニャ遊星人の恐るべき目論見があった。果たして、気特対と日本古来の”神々”は、怪獣を撃退することができるか?

怪獣が存在する架空世界での戦いを描いたSF、第3弾。教訓めいた”山本弘節”が最近は目立つ最近の著者の作品の中では、いっとうSF色が強い作品。本書では「古来から神々がどのように変化しながら継承されたか」が詳細に検討され、物語に結びついていく。さらに本作は、物語の集大成といえるくらいの大型怪獣が勢ぞろいし、激しい戦いが繰り広げられる。自分は残念ながら物語に盛り込まれるパロディの一部しか理解できないが、日本怪獣映画へのリスペクト溢れる作品だ。

初版2013/05 東京創元社/ソフトカバー

2013.07.01

書評<マオキッズ: 毛沢東のこどもたちを巡る旅>

中国共産党毛沢東主義派。中国ではすでにその思想は人民の思い出の中に押し込まれ、観光の一部とさえ化しているが、ネパールやフィリピンではいまだその思想を信じて戦っているゲリラたちが存在し、日本にもその残滓を胸中に抱えている人物たちが存在する。
本書は毛沢東主義派である”マオイスト”たちの末裔をネパールの奥地、フィリピン、日本で追い、あらためて毛沢東主義とはなんだったのかを問い直すノンフィクションである。

本書のメイン構成は2部に分かれる。一方はネパールのゲリラたちの現実の取材。。農村からゲリラが都市を攻撃することで、共産革命をほう起させようとする毛沢東主義。本国ではとうの昔に形骸化した思想が、未発展の厳しい山地の住民たちの間には、まだその思想は生きている。だが、あくまでそれはゲリラ幹部たちの間だけだ。ゲリラ兵士の末端では、どこか虚しさと諦めさえ感じられる。それは情報過多の日本人の目を通して見るからだろうか?本書は答えを示さないが、経済がグローバル化する一方の世界での毛沢東主義ゲリラという存在自体の虚しさを感じる。
そしてもう一方は日本での毛沢東主義を信じて革命を起こそうとした挙句、身内モメで”総括”と称して殺人を繰り返した日本赤軍の生き残りの今だ。都市で生活しながら、毛沢東主義を思想的背景として革命を起こそうとしたゲリラたち。そもそも論として”貧困にあえぐ農村”という存在事態が希薄だったのに、その思想を掲げた”自称革命家”たちは、その理屈だけで物事を捉える非現実さゆえ、世間から受け入れられず、思想的にも分裂して自滅していった。今となっては、反権力を気どり、”ゲリラごっこ”をしたかったとしか思えないその幼稚さ。ゲリラの生き残りの男が、いまだその残滓を引きずっているところに、人間の思考の”変針”の難しさを感じる。

世界中の貧者たちに革命の夢を与えた毛沢東主義は、その残滓に過ぎないとはいえ、世界にまだ爪あとを残している。ますます不安定になる世界情勢に、その思想は今後どのような影響を与えていくのか。捨てられた思想として見限るには、まだ早いと思わせるルポだ。

初版2013/04 小学館/ソフトカバー

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