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書評<マオキッズ: 毛沢東のこどもたちを巡る旅>

中国共産党毛沢東主義派。中国ではすでにその思想は人民の思い出の中に押し込まれ、観光の一部とさえ化しているが、ネパールやフィリピンではいまだその思想を信じて戦っているゲリラたちが存在し、日本にもその残滓を胸中に抱えている人物たちが存在する。
本書は毛沢東主義派である”マオイスト”たちの末裔をネパールの奥地、フィリピン、日本で追い、あらためて毛沢東主義とはなんだったのかを問い直すノンフィクションである。

本書のメイン構成は2部に分かれる。一方はネパールのゲリラたちの現実の取材。。農村からゲリラが都市を攻撃することで、共産革命をほう起させようとする毛沢東主義。本国ではとうの昔に形骸化した思想が、未発展の厳しい山地の住民たちの間には、まだその思想は生きている。だが、あくまでそれはゲリラ幹部たちの間だけだ。ゲリラ兵士の末端では、どこか虚しさと諦めさえ感じられる。それは情報過多の日本人の目を通して見るからだろうか?本書は答えを示さないが、経済がグローバル化する一方の世界での毛沢東主義ゲリラという存在自体の虚しさを感じる。
そしてもう一方は日本での毛沢東主義を信じて革命を起こそうとした挙句、身内モメで”総括”と称して殺人を繰り返した日本赤軍の生き残りの今だ。都市で生活しながら、毛沢東主義を思想的背景として革命を起こそうとしたゲリラたち。そもそも論として”貧困にあえぐ農村”という存在事態が希薄だったのに、その思想を掲げた”自称革命家”たちは、その理屈だけで物事を捉える非現実さゆえ、世間から受け入れられず、思想的にも分裂して自滅していった。今となっては、反権力を気どり、”ゲリラごっこ”をしたかったとしか思えないその幼稚さ。ゲリラの生き残りの男が、いまだその残滓を引きずっているところに、人間の思考の”変針”の難しさを感じる。

世界中の貧者たちに革命の夢を与えた毛沢東主義は、その残滓に過ぎないとはいえ、世界にまだ爪あとを残している。ますます不安定になる世界情勢に、その思想は今後どのような影響を与えていくのか。捨てられた思想として見限るには、まだ早いと思わせるルポだ。

初版2013/04 小学館/ソフトカバー

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