書評<ドイツ連邦戦車開発小史>
戦車王国ドイツを引き継いだ新生・ドイツ連邦は、ソ連地上軍の急速な驚異の増大に対抗するために新戦車の開発計画を立ち上げ、レオパルトⅠを開発、さらに現在も一線にあるレオパルトⅡといった傑作MBTを生み出してきた。本書はそのMBT2種と、開発途中や計画だけで中止された車両も含めて、ドイツ連邦が生み出した戦車を、ケモ耳娘たちが紹介するいわゆる”萌えミリ本”である。
本書は同人誌をまとめたものであるが、ドイツ連邦が開発した歴代戦車の特徴と、その開発思想を的確に解説しており、ケモ耳娘はイラストに添えられているだけの至極まっとうなミリタリー読本となっている。それなりに知識もあったレオパルトⅠおよびⅡの解説よりも、むしろアメリカとの共同開発が空中分解したMBT、KPz70や双砲塔ケースメイト戦車の試験車両であるDRKとその眷属たちの話の方が興味深い。MBTの形態は戦闘機や主力艦船と違い、2次大戦後期時の主力兵器で完成された感があるが、ドイツ連邦は様々な可能性を探っていたのだ。読み物としても面白いが、海外文献の写真1枚から起こしたイラストなど、資料としても価値が高い。
地方在住民としては、こういった同人誌をまとめて商業出版にのせる路線を、イカロス出版さんには確立させて欲しいものだ。
初版/2013/07 イカロス出版/大判ソフトカバー
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