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書評<わたしたちの体は寄生虫を欲している>

わたしたち人間はとかく他の生物と自分たちを分け隔てて考える傾向があるが、進化の過程のある段階までは、他の生物と同じように多くの”共存関係”にあった。だが、医学の進歩とともにその共存関係は断ち切られ、例えば先進国の人間の腸からは寄生虫は消えている。だが、それは本当にプラスだけをもたらしているのか?人類が知恵のおかげで受けてきた清潔な環境と医学の恩恵の弊害が理解されつつある今、人間は他の生物との共存関係を見直すべきではないのか?それを問いかけているのが本書である。

タイトルどおり、本書はしばらく、人間と寄生虫の関係に言及しながら進化と人間と他の生物との関係を探っていく。我々が忌み嫌う寄生虫は栄養不良をもたらし、感染症をもたらすため、我々はそれを医学により排除していた。だが、”知恵”によるそうした環境変化に人間の体の変化はまったく追いついておらず、寄生虫にさらされる方がかえって健康を取り戻すケースが出てきているのだ。それは何も腸内に限ったことではない。本書の後半ではその範囲を拡げていき、最終的には人間を飛び越えて”都市”の変化を促すことにまで言及している。寄生虫と人間との関係は発端にしか過ぎず、著者は人間と自然の関係を巡る逸話の範囲をどんどん拡げていくのだ。
かといって、本書は過激な自然礼賛本ではない。人間が清潔さを追求し、飛躍的に罹病率を劇的に下げたことは確かなのだ。だが、それを超えて、人間と自然の関係にもっと妥協点があるのではないのか?それを探り、現時点での妥協点を提案しているのが本書であり、過度に理想的でない点に非常に好感が持てる。

初版2013/07 飛鳥新社/ソフトカバー

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