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2013.08.13

書評<食卓のメンデル: 遺伝子組み換え食品の正しい見方>

GMOと略される遺伝子組み換え食品は、日本や欧州では一部科学者から一般的な消費者まで幅広く拒否感を抱いており、大豆やコーンの生育で使用が先行するアメリカとは一線を引いている。だが、植物の品種改良は人類が農業を始めたそのごく初期から行われており、現在、我々の口に入る植物にいわゆる”原生種”はまったくない。挿し木や放射線照射による品種改良と、GMOはどこが違うのか?本書はそれを解説し、GMOとそれを開発する科学者と企業の動きと合わせ、それが未来の人類のためにいかに必要かを訴える。

「植物に動物の遺伝子を組み込む」といった、一見不自然な技術を使うことから、一般的な市民には拒否感を抱かれるGMOだが、遺伝子と植物の品種改良の歴史を知れば知るほど、その拒否感はなくなる。特に近年の”緑の革命”と呼ばれる化学肥料と品種改良による穀物の生産量の飛躍的な拡大がなければ、現在の人類の人口を支えることはできなかったはずなのだ。
GMOへの拒否感は、モンサントなど一部グローバル企業が種子とそれに対応する農薬の販売を独占していることもあるようだ。モンサントには陰謀論めいた批判もあるし、いくらかの”闇”があるのも確かだろう。しかし、製薬企業と同じく、植物の品種改良は膨大な試験の繰り返しで、資本力がある巨大企業でないと無理な時代になりつつあることも事実であることも認めなければならない。
ともかく、GMOをイメージやイデオロギーで語ることなく、その特徴を正確に理解するために、本書は最適な一冊だ。

初版2013/04 日本評論社/ソフトカバー

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Comments

いつも楽しく読ませてもらっています。
暑いけど頑張ってくださいね。

サバイバルキャンプから戻って来ましたので、よかったらブログも見てください。

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