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2013.10.05

書評<F‐16―エース・パイロット 戦いの実録>

著者は1986年から2006年まで、F-16ヴァイパーのパイロットとして数々の実戦をくぐり抜けてきただけでなく、数々の勲章を受章したエリート・パイロットだった。航空攻撃任務のうち、もっとも危険といっていいSAMサイト制圧(SEADあるいはDEAD)を主任務とするワイルド・ウィーゼル部隊に所属する彼のパイロット人生と、危険な任務の内容をあますことなく綴った、骨太の手記である。

湾岸戦争以降、戦闘機のパイロットは報復テロのターゲットとなる可能性があるためにプロフィールが明かされることが少なく、ましてパイロットの手記となると珍しい部類となる。本書はその手記の1つであり、またワイルド・ウィーゼルという危険な任務の実態を垣間見れるということで2重の意味で貴重だ。
内容で一番印象に残ったのは、まず著者本人。著者は相当に鼻っ柱の強いパイロットで、自らをエリートと自認し、上官反抗も当たり前。まあ、このくらいでないと、SEADという危険な任務はこなせないということか。
そして、著者が参戦した実戦のシーンも鮮烈な印象を残す。本書の冒頭にはワイルド・ウィーゼル部隊の説明が記載されているが、そこにごく初期のワイルド・ウィーゼル機のEWO(電子戦士官)の名言が記載されている。
「自分は無敵だと思い込んでいる、頭のいかれた戦闘機パイロットの後ろに座って、ちっぽけなジェット機で北ベトナムのSAM陣地に向かって飛び、そいつに撃たれる前にそれを撃てというのか?冗談きついぜ!」
ベトナム戦争から20~30年経った今でも、この言葉から想像される任務の危険さはさほど変わらない。常にレーダー警報装置のアラームがなる中、アンチ・レーダー・ミサイルをぶっぱなす。電子機器が進化し、データリンクで状況把握が格段に進歩したとしても、敵もまたSAMコンプレックスを形成し、虎視眈々とターゲットを探しているのだ。イタチごっこは今も続いている。
その実戦の記述は、2003年のイラク戦争の頃の分量が多め。個人的には、イラクの防空体勢が万全だった、湾岸戦争の頃の混乱した実戦の記述がもっと欲しかったが、ぜいたくというものか。
湾岸戦争以降のアメリカ空軍の実戦は、基本的に不正規戦で制空権が確保された戦場でのことであり、ベトナムのころに比べれば危険度が緩和されていると誤解しがちだが、歩兵携行モノから車両搭載モノまで、いたる所にSAMがばら撒かれた現代、実戦はそんな甘いものではないと強く感じさせる手記であった。

初版2013/09 柏書房/ハードカバー

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