書評<名作・迷作エンジン図鑑―その誕生と発展をたどる>
著者は日野自動車の技術設計者。本書はコモテックという自動車部品メーカー社内誌での著者の連載をまとめたもので、「今現在のピストンエンジンに至る道」をごく初期の蒸気エンジンから紹介していき、解説する。産業革命をもたらした創世記の動力から、日野自動車が世界の自動車産業で確固たる地位を気づいたディーゼルエンジンまで、技術者のアイデア溢れたエンジンたちを解説する。
現在のピストンエンジンはサイクルや補器に違いはあれど、どのエンジンもピストンやクランクシャフト、ブロックなどの基本構造は変わらない。だが、そこに至るまでは19世紀から様々な試行錯誤があった。日本を代表するエンジン技術者の一人である著者が、詳細なイラストともにそれを解説する。著者は本書で紹介されるエンジンをほぼ全てを実際に見て、スケッチし、解説する。一流技術者といえど、想像するしかない構造もあったりして、エンジン技術の奥深さを感じさせる。著者が日野自動車の方なので、その前身の東京瓦斯電気工業を含めた日野自動車関係の記述が多めだが、エンジンの歴史を知るには充分である。特に2次大戦前後の日本のエンジン開発の現実は、もう負け戦そのもので、あらためて開戦の無謀さを思わずにはいられない。
エンジンは治金から組み立てまで総合技術テクノロジーの結晶である。現在では自動車用エンジンを設計・生産できるメーカーを抱える国は多いものの、世界中から信頼を得ているメーカーはごくわずかだ。我々日本人はそのわずかな国であることを、もっと誇りに思うべきだとつくづく思う。
初版2013/08 グランプリ出版/ソフトカバー
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