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2013.11.04

書評<トップシークレット・アメリカ>

9.11同時多発テロは、アメリカのあらゆる情報機関にとっての敗北であり、その後の対応はパニックそのものであった。危険なシグナルを発する情報はあったものの、組織間の連携がとれずに”ハートランド”への攻撃を許し、多大な犠牲者を出したことから、情報機関を統合する組織と指揮者が新たに新設され、従来の組織それぞれも、現在も続く”対テロ戦争”のために、雨後の筍のごとく新たな機密機関を設置し、活動を始めた。その結果はどうなったか?意思決定を行う高官が把握できないほどの多くのレポートを生み出し、重複する組織は膨大な予算をムダ食いしている。CIAはじめ多くの機関は自前で組織の人員を維持することができず、民間に業務を下請けに出し、”トップ・シークレット”と呼ばれる機密情報を扱う人員の裾野は看過できないほど拡がっている。本書は丹念な取材を調査から、そうしたアメリカの情報組織の実態を明らかにしていく。

本書の取材と調査の中心となるのはアメリカのワシントン。言うまでもなくアメリカの政府機関の集まる特別区であり、多くの諜報機関が集中する。その数は冒頭の組織の相関図を見るだけでも膨大で、公式には諜報機関を持たない日本国民からすると、クラクラするほどである。本書は政府の公開文書と丹念な取材により、機密指定となる部分は除外して、その組織が入る建物の外観から、組織自体の雰囲気までを丁寧に描き出している。新しいビルと広いフロアは端的にいえば膨大な予算を使っていることを示し、組織それぞれの持つ雰囲気は、組織が抱える問題の深さを示している。民間への人材の流出、まったく存在を無視される組織間の調整機関、アンチ・テロリズムの名のもとに、愚行を繰り返す実行部隊。本書は高官たちのインタビューが多く掲載されているが、決して機密情報を暴露しているわけでもないのに、問題の大きさがまざまざと伝わってくる。結局のところ、トップシークレットを扱う人間が多すぎて、機密情報を守れていないという、皮肉な状態になっているのである。
このような状態を脱するにはパラダイム・シフトしかないわけだが、テロリズム自体はまったく衰えの気配を見えない昨今、それが可能なのか?ただでさえ、アメリカ政府は議会と政府が対立し、予算さえまともに通らない状態である。次回の大統領選以降、アメリカの諜報機関がどう変わるか?今後も注目していかなければならない。
個人的にはこの情報機関の予算ムダ食いが国防予算を圧迫し、最終的に日本の航空祭の開催や参加機に影響しているかと思うとやるせないものがある。なんとかしてもらいたいものだ。

初版2013/10 草思社/ハードカバー

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