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2013.12.14

書評<国家の興亡 ‐人口から読み解く‐>

国民国家というものが領土・国民・政府で構成されている限り、人口が国力の要となることはいうまでもない。かつては地球全体の人口増加による自然破壊や食糧危機ばかりが問題視されていたが、いまや先進国や新興国は少子化による高齢化・人口減少に悩んでいる。本書は主に安全保障の面から人口動態に注目し、今後の世界情勢を予測していく。

日本はいうに及ばず、世界の先進国は高齢化社会に悩んでいる。社会福祉の負担は現役世代に過剰な負担を強い、ひいては経済環境の悪化をもたらす。それは国力の衰退を招き、安全保障上の重大な問題となる。本書は古代ローマの歴史的事実などを取り上げながら、人口動態の変化が国家にどのような変化をもたらすかを分析している。
例えば日本。世界に先駆けて超高齢化社会になつつつあり、福祉予算が国家予算を圧迫しているが、一方で周辺国には冒険的な外交姿勢を取っている国もあり、国防予算も減額できない。だが軍と民間企業が、減りつつある若者を取り合いする時代である。結果をどう予測するか?最善のシナリオは無駄な争いを好まない”老人の政治”に落ち着くことであり、最悪なシナリオは通常戦力では安全保障を担保できないことから、核武装に進むことである。
例えばロシア。厳しい気候と政治体制から、この国では飲酒・喫煙などを要因とする健康被害が先進国とは思えないほど深刻であり、高齢化とともに国力の低下を招いている。リーダーは”強いロシアの復活”を模索するが、それを支える人口がいなくなる自体が目の前にある。現に、出稼ぎという名で、シベリアには中国の移民が押し寄せ、実質的に領土を失いつつあるといっても過言ではない自体に陥っている。
本書はこのように各国の人口動態を分析している。唯一希望的観測が成り立つのはアメリカぐらいで、その他の地域は楽観を許さない。今後の世界情勢を見ていくうえで、大変参考となる本である。

初版2013/09 ビジネス社/ハードカバー

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