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書評<にわかには信じられない遺伝子の不思議な物語>

地球上の生物のセントラル・ドグマをつかさどる遺伝子すなわちDNAは、比較的単純な物質でありながら全体として複雑怪奇な構造をしている。さらに生物にとって最重要な存在でありながら、極めて不安定で、常に情報の伝達ミスと隣り合わせになる。そうしたDNAの特徴ゆえ、ときに遺伝子は信じられないような不思議な事態を引き起こす。本書はそうした遺伝子にまつわる興味深いエピソードをその発見から、最新の知見まで紹介していく。

本書は難解な分子生物学を取り扱うタイプの本ではない。科学的な説明は必要最低限にとどめ、DNAに関わる物語を紡ぐことを優先し、それに成功している。19世紀以後の科学の発展の中で、個性的な科学者たちが、いかに単純で複雑なその塩基の姿を探っていったのか?やがて分子生物学が発展し、ヒトゲノムのすべての解読が成功するが、そのインパクトは科学者たちが思うより小さかった。塩基配列が明らかになり、生物の構造全てが読み解けるどころか、表向きは何の役割も果たさないと考えられるジャンク遺伝子が大半であり、遺伝の仕組みがますます複雑怪奇なことが明らかになるだけだったのである。
本書はさらに遺伝子学の最新トピックであるエピゲノム遺伝子にも触れる。生物が生存中に獲得した形質が、遺伝子を通して子孫に受け継がれるというエピゲノム機能の発見は、はるか昔に捨てられたラマルクの説を復活させることになった。
先に述べたように、本書は科学書としては文学的だ。だがそれゆえ、深遠なDNAの世界を描き出すことに成功している。

初版2013/10 朝日新聞出版/ハードカバー

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