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書評<サンフレッチェ情熱史>

2013年のJ1を制し、2連覇を達成したサンフレッチェ広島。だが、サンフレッチェは常に優勝を争う強豪ではなかったし、今後もそうなることはないだろう。予算はJ1所属チームの中で中位程度、強くなればなるほど、その中心選手を他チームに抜かれていく、地方チームの矛盾を常に抱えるチームであり、現にチーム創設から20年の間に、2度のJ2降格を経験している。そのチームがなぜJ1になんとか踏みとどまり、リーグ制覇を成すことができたのか?そこには著者をはじめとする”広島人”たちの情熱があった。本書はチーム情報誌を発刊するスポーツジャーナリストであるながらサポーター目線も併せ持つ著者が見た、サンフレッチェの20年史である。

著者はJリーグブームが去り、各チームが苦境に陥り始めたときからサンフレッチェを追い続け、チームのフロントや選手、またサポーターからも信頼の厚い人物である。本書は、挫折と苦難の日々を歩み続けたチームの中心人物たちを見続けた、著者の人生の物語ともいえる。その著者と、彼が見続けたチームには、常に情熱溢れる人物たちがいた。そもそも、彼がサンフレッチェ専属ともいえる立場になろうと決意したのは情熱溢れる2人の人物との出会いゆえだったし、その後もなんとかチームを支え続けようとする人たちが20年の時を繋いだ。著者はそうした人物たちが成した事、成しえなかったことを書くことにより、クラブの歴史の物語を紡ぐことに成功している、もちろん、情熱ですべてがうまくいけば、J2降格などあろうはずがない。予算という最大の障害をはじめとして、プロチームの維持は困難がつきまとう。かつてJ1に所属しながら、J2に”定着”してしまったチームも数多い。そうしたチームとサンフレッチェは何が違ったのか?本書はそれをおぼろげだが、描き出すことに成功している。広島とサンフレッチェを知る人ならば、読み終わる頃には目が潤むこと必死な本である。

初版2013/12 ソル・メディア/ソフトカバー

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